ギルドをクビになったから、エルフ幼女(キュウリ大好き。すぐに話を盛る)と元後輩(幼児退行癖あり)と元ゾンビのメイド(無自覚エロ)と一緒にチートスキル「ステータス編集」でスローライフを送ることにします
うーぱー
プロローグ:解雇編
第1話 トッシュはギルドを解雇される
国境の長いトンネルを抜けると魔法王国であった。
具体的には、新潟県から群馬県に通じる清水トンネルです。
新潟県民びっくり。
清水トンネルを抜けたら、上半身裸の男達が槍を持って、
オークと戦っているのです。
そう。
ここは『和風ナーロッパ』。
現実世界とゲームがまだらに混ざり合った世界です。
199X年に世界は核の炎に包まれはしませんでしたし、
ノストラダムスの「地球が滅びる」という予言が的中することもありませんでした。
ですが2000年に、突如、日本の至る所がゲームの世界と入れ替わってしまったのです。
そして、人々は様々なゲームスキルに目覚めていきました。
さて、この物語の主人公は、トッシュ・アレイ。
17歳の男です。
黒髪で平凡な顔つきをしており、中肉中背。
何処にでも居そうな風体です。
果たして、トッシュはいったい、どんな活躍をするのでしょうか。
物語は、トッシュがギルドマスター室に呼びだされたところから始まります。
「ギルマスが定時に帰ろうとしていた俺を、
わざわざ呼びだしてまで、首なんて心配してくれるんですか?
サンキュー。肩こりもなく快適ですよ」
トッシュが肩をぐねんぐねん回している、
ギルドマスターの金星(かねほし)がデスクを叩いた。
ドンッ!
「クビだクビ! 解雇だ!
貴様は現時刻をもって解雇だ!」
「はあ?
解雇される理由に心当たりがないんですが?」
「その生意気な態度だ!」
「いやいや、態度や性格が原因で解雇って、
聞いたことないんですけど」
「おい、待て。トッシュ。
貴様、どうしてポケットから、裂けるチーズを出して食べ始めた」
「18時ですし、お腹が空いたので」
「だいたいなんだ、貴様のその服装は!
上から下までポケットだらけで、輪郭がデコボコして、
七支刀か!」
「しちしとう?」
「ちっ。四類は教養すら足りないか」
金星が口にした四類とは、出生を意味する分類のことだ。
「いやいや、ギルマス。それは、我々の業界で使ってはいけない差別発言ですよ」
「貴様は先月、何時間、働いた?」
「きっちり160時間働きましたよ」
「そう。たったの、160時間だ。
皆が200時間以上働いているのに、どうして貴様だけ、
残業をしていないのだ?
何故、18時の今、ギルド内に居る!」
「何故って、帰ろうとしていたのに呼ばれたから、まだ居るんですが?」
「何故、ダンジョンや戦場に行かないんだ!
……?
待て、貴様、なんでキュウリをかじっている」
「いや、チーズを食べ終わったので」
「貴様はチーズやキュウリを持ち運ぶために、そんな上も下もポケットだらけの格好をしているのか! 社会人だろう。スーツを着ろ!」
「スーツは高いじゃないですか……」
ダンッ!
金星は机を叩いた。しかし、強く叩きすぎて、ちょっと手が痛い。
「大丈夫ですか?」
「……貴様は『ダンジョン探索RPG』世界の攻略を支援する業務に就いていたよな?!」
「ええ」
「見積もりでは攻略難易度A。
契約は20階までの攻略支援。
既に期限まで残り6営業日だ!
事務所に戻ってくる余裕などないだろう!
にもかかわらず、貴様は毎日定時前に戻ってきているそうだな!」
「えっと、もう10分経ったんですけど、
この時間って、残業代でるんですか?」
「ふざけるな! 出るわけないだろ! クビだ! 二度と来るな!」
金星は会話の終了とばかりに、椅子を回転させた。
ふとっちょ短足の姿は背もたれに隠れて、
トッシュからは見えなくなる。
「あー。まあ俺がクビになるのは構わないんですけど、
俺がいま担当している客が困るんですけど?」
「貴様の代わりに日人(ひびと)が担当する」
「あー。ギルマスの息子だからっていう理由で課長になったあいつの能力じゃ 無理ですよ」
「黙れ! 貴様に途中まで出来ていたような温い仕事が、ワシの息子に出来ないわけがないだろう! さっさと出ていけ! 警察を呼ぶぞ!」
「んー。まあ、ギルマスジュニアには無理だけど、代わりにネイさんかドルゴをアサインしてくださいよ」
「黙れと言っている! 早く出ていけ!」
「はいはい。では、今までお世話になりました」
トッシュはギルドマスターの部屋を出た。
「なるほど。クビは解雇のこと……と。
んー。ナーロッパ出身の俺に、日本の言い回しなんて通じるわけないだろ」
トッシュは乾燥トマトを取りだしてかじる。
「異なる世界の人々の橋渡しをする仕事って聞いたから、このギルドに入ったのに……。しゃあない。切り替えてこ」
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