“リロール”-ブタから英雄になる国盗り物語‐

名乗るほどの者ではありません。

第一章 事の始まり、この世界で男が生きていく息苦しさと絶望を知る

第1話 異世界にはパンイチで挑むべし

「んほぉおおおっ!!」


お恥ずかしながら、これが我が一生の最後の言葉である。


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少し時を戻して事の経緯を説明しましょう。


季節は秋。


よく食欲の秋と言い、『天高く馬肥ゆる秋』などという風流な言葉がある。


そんな言葉を忠実にも体現した如く肥えた腹回りを見ながら「最近太ったかな?」などと呟いていた夜、自宅への帰り道のこと。


秋の食欲に負けてすっかりキツキツのパツパツになったお腹周りを摩り「これで少しは脂肪が燃えないかな…」なんて思っていると、急に後ろからドンッという衝撃と共に背中に熱い激痛が走った。


そして、その瞬間に一言。


「んほぉおおおっ!!」


と私は天高く叫んだわけである。


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更に、少し時を戻して事の経緯を説明しましょう。


季節は秋。


よく食欲の秋と言うが、私にとっては性欲の秋でもあった。


ぽっちゃりの見た目な私であるが、いやはやぽっちゃりだからと言って別に女性にモテないわけではない。最初は会社の同期の女性、次に会社の上司、よく行く美容室のお姉さん、アパートの隣の部屋に住む人妻、近頃何故か近所に引っ越してきた幼馴染…など、最近になって私は多くの女性と体の関係を持った。


別に彼女らの弱みを握ったり、エロ本御用達の催眠アプリなる怪しげなものを使ったわけではない。


自然な流れで彼女らと男女の関係になったのだ。そう、まるでこうなるのが当たり前のように。


しかし、その私を中心とする幾多もの女性関係はいつまでも平穏というわけにもいかず、私が知らぬ間に彼女たちの渦は混沌を極めに極めた混沌となり、遂に私は夜道でとある知人女性に後ろからぶすりと刺され、


「んほぉおおおっ!!」


という大変お恥ずかしい死に際の台詞の残すわけとなったのだ。


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そして、時は今に戻ります。


「…以上が事の経緯でございます、女神様。それでも私は地獄行きでしょうか?」


「うん、地獄行き☆」


「あれま…」


反省丸出しのパンイチ姿で正座する私に対し、自称女神様はニッコリスマイルで冷たくそれだけを告げた。まるで取り付く島もない。


あの「んほぉおおおっ!!」という絶命のすぐ後、気が付けば私はパンイチで見知らぬ場所に居た。


どこまでも続く青空に、白く透き通った宮殿。


ここが死後の世界というやつなのだろうかと驚いている所に、この女神様は配下の可愛らしい天使を数人引き連れて私の前に降り立った。そして、彼女は無言の笑顔で近づくと私の顔をぴしゃりと引っ張たいた後に「貴方は地獄行き」とそれだけを告げた。


“地獄”とは穏やかでないと、私は死ぬまでの経緯をしっかりと説明したが、結局先程の有様であった。あぁ、無念。


「あの、それで地獄というのはあの地獄でしょうか?鬼とか怖い人たちがいっぱい居て、とげとげの付いた鉄の棒でお尻を打ったり刺したりとかいう」


「て、鉄の棒でお尻を…!?そ、そのような破廉恥な場所ではありません!!」


私の言葉に顔を紅くして背ける女神様。案外神様は初心であらせられるらしい。


「して、それでは私が行く地獄というのは?」


「“地獄”というのは例えです。他の言葉で言えば…“異世界”ですかね」


「なるほど、これが俗に言う異世界転生というものですね!!アニメで見たことがあります!!」


「な、なんで貴方の世界では死後に異世界に行くことが周知の事実になっているのかはあえて聞きませんが…」


そう言うと、今まで色々な表情を見せてくれた女神様であったが、その顔が急に険しいものに豹変した。


「貴方がこれから行く世界は男性にとっては最悪の世界です」


すると、気が付くといつの間にか正座する私の前まで女神様はその距離を詰めている。


「あと、残念ながら転生ではありません。貴方はその無力な体を引きずったまま、異能の力に翻弄されながら前世での行いを悔いなさい」


そして、私の眼前にすっと差し出されたその美しい手が煌めき、私はあまりの眩しさに思わず目をつぶった。


その数秒後、目がようやく光から解放された時、私は見知らぬ小屋の中で見知らぬ女性たちに囲まれていた。皆、家畜のブタでも見るような冷ややかな目をしていた。


……これが私の経験した長い長い異世界物語の冒頭である。


それでは、またお時間があれば、是非とも私のお話の続きを聞いてほしい。

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