後ろ姿

ガンベン

第1話

あの時のあなたの言葉が最後になってしまうと知っていたら




どれだけその言葉を大事にしただろうか




きっと何度も何度も聞き直して




メモに取って、忘れないようにしただろう




最後に触れる手の感触だったと知っていたら




どれだけ長い間触っていただろう




しわの大きさや荒れた手を何度も触り直して




愛おしく何度も感じただろう




あの時の出会いが最後だったとしたら




その前日の夜は寝れないことだっただろう




小さな頃のように寝るのを忘れて




あなたのことを考えていただろう




最後だと知っていたら、きっとその最後の時を




いつまでも忘れないようにしただろう。








あなたが、私と会うのが最後だと知っていたら




きっと悲しむだろう。




何度も何度も、私の言葉を聞き直して




大事に聞いてくれるだろう




私の言葉は、いつもの言葉だ。




いつもと変わらないように聞いてほしい。




いつものように聞いてほしい。




いつものあなたの笑顔で聞いてほしい。




だから、あなたが去る姿を




眼に涙を浮かべて




送り出したい




幸せであってほしい




そう、これで良かったと思えるように




あなたには幸せになってほしい




あなたの後ろ姿は涙で見えないけど




あなたのことをいつまでも見守っているから




幸せになってほしい




そして、今までどうもありがとう。そして、さようなら。




元気で。どうか幸せに。それだけを祈ってるよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

後ろ姿 ガンベン @gangbenzhuoye

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る