成功確率

 何か使えそうなものがないか周りを再度見回しても景色が変わる訳もなく、緑が広がっているだけ。


 あ、そういえば。猫の目って確か夜でも見えたはず。そういうのって、やっぱり式神にも反映されているのかな。

 そうなると、光に弱いとか……。そう簡単なものじゃないかもしれないけど。


『なにか思いついたみたいだね。言ってみなよ。馬鹿発言じゃなければ聞いてあげる』

「う、うん。あのね──」


 まだ頭の中で整理出来ていないからうまく説明が出来なかったけど、闇命君は真剣な顔で最後まで聞いてくれた。

 今回のは闇命君の中で馬鹿発言ではなかったらしい、良かった。


『なるほどね。まぁ、さっきより確率は高くなったんじゃない?』

「それでも、やっぱり確実では無いのか……」

『この世に確実なものなんて存在しないんだよ。必ずどこかに穴がある。それは相手にも言えるし、僕達も同じ。だから、どれだけ確率をあげるかで勝敗が決まるんだ』


 子供の発言とは思えない言葉だ。

 高校生である俺でさえそこまで考えない。天才だとこうなってしまうのだろうか、なんだか悲しいな。

 子供らしさが残っていてもいい年齢なのに。

 いや、まだ子供でいていい年齢なんだよな、闇命君。


『とりあえず、その作戦を実行しよう。失敗してもいいように次の案も考えておいてね』

「わかっ──考えておいてね??」


 え、待って。今のってもしかして。

 今の作戦を実行しながら、次の作戦を考えろという事かい? え、そんな……。


 無理に決まってるじゃんかぁぁぁあああ!!!


 ☆


『居たね』

「居たね……。優雅に獣道のど真ん中で毛繕いしているよ、可愛いな……」


 作戦を実行すべく、事前準備を終わらせ、無事に雷火が追尾してくれていた猫刄を見つける事に成功確率。

 気を集中すれば雷火の場所は簡単にわかると聞いて、実行したら本当に分かった。やっぱり繋がりはあるんだなぁ、凄い。


「ひとまず、雷火を猫刄に気付かれないようにこっちへ移動させたいな……」

『それなら簡単だよ』


 え、簡単?


『雷火』


 あれ? 闇命君が呼んだ瞬間、雷火が消えた?


『後ろ』


 え、後ろ?

 ……………え、後ろに雷火。しかも、地面に立って見上げてきてる。

 その眼光が鋭くて少し怖いな、舐めてかかってすいませんでした。


「式神って、なんでもありなんだね」

『雷火だからね。素早さ重視の式神だって事忘れないで』


 だからって、目にも止まらぬ早さでなんて……。マジですごいなおい。


「ま、まぁいいや。とりあえず作戦を遂行しよう。時間が無いし。今の時間なら──西で大丈夫か……」


 今が何時くらいか分からないけど、太陽が少しだけ西側に移動してる。なら、十二時は確実に過ぎているはず。


 太陽を目印に、猫刄を誘導しよう。


「それじゃ、お願い。闇命君、雷火」

『仕方がない。今回だけは乗ってあげる』


 闇命君はやれやれと言った感じに返事をしてくれ、雷火は素直に頷いてくれた。

 あぁ、雷火よ。君はどれだけ素直なんだ。可愛いぞ。後で沢山撫でてあげるからな。嬉しいか分からないけど。


「よしっ。なら、いくよ」

『うん』


 闇命君と顔を見合せ、頷き合う。


 やろうか、必ず成功させてやる。


 意気込みを胸に、近くにあった石を拾い、猫刄に向けて投げる。

 石がいきなり飛んできたと思った猫刄は、毛繕いをやめて後ろへと跳び回避。そのまま去って行こうと走り出した。


『行くよ、雷火』


 闇命君の声に反応し、雷火は大きな雷の翼を広げて羽ばたく。

 彼も一瞬にしてその場から姿を消し、俺の周りからは誰もいなくなった──寂しいな!!! 作戦通りだからいいんだけどさぁ……。


「よしっ。俺は俺の役割をしっかりとやりきるぞ」


 一回気持ちを落ち着かせるため深呼吸をして、よし。さっき闇命君に教えて貰った方法で──


「時間が無いこの状況、確実なものなんてないけど。少しでも確率をあげなくちゃいけない。集中力を切らさずに──」


 袖から一枚の人型の御札を取りだし、目を瞑る。


「……────急急如律令!!!!」

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