第4話 探し人

  俊は、おじいさんに探してほしいと言われた人を探しながら歩いていたが、なかなか見つからずにいた。


 ”あーもう。その人の位置情報さえわかったら、すぐに会えるのに。この時代のシステムってホント遅れてるよな!”っとめんどくさそうに思った。 22世紀は監視社会で、人ひとりに位置情報を監視できるシステムが構築されていた。ただ、これは安全のために、取られた政策でもあった。これにより、凶暴な犯罪や不必要な軽犯罪がなくなり、お互いが緊張下におかれることにより、ベストとは言えないながらも、法的な保護をうけながらの、生活を送れるようになっていた。


 このシステムが取られる前に、政治家たちや位置情報システムを開発した人たちも、激論が繰り広げられたが、結局はこのシステムを採用するようになっていった。




 ”まあ、仕方ないか。おじいちゃんには、園田さんは見つからなかったって言ったらいいことだから”


 俊は、独り言のように、自分に言い聞かせるように言ってみた。園田というのは俊のおじいさんが、お世話になった人だった。22世紀では医学界の偉人として称えられ、医学界の新発見をした人でもあった。ただ、2020年時点の情報では、園田は全然有名ではなく、歴史データの中にも出てこない人だったので、全く手がかりがつかめなかった。




 また、色々歩いてても、途中で周りの風景が退屈に思えてきた。どこを歩いても、同じような風景で見新しい気がしなかった。以前仮想空間で、この時代の風景を見ていたので、わざわざタイムマシーンを使ってまで来る必要はないかなって思い始めた。




 そして、俊は近くに公園があることを地図で知り、そこに向かっていった。


 "ふう、後1時間か。ここでちょっと休憩してから、園田さんを探してみようかな。それで無理なら、諦めて張華を呼んで22世紀に帰ろうっと"


 しばらく、歩くとある公園を見つけた。やはり誰もいない殺風景な公園だった。ただ、奥まったところに、一人白衣を着ている人がベンチに座っているのを見つけた。


 ”珍しいな。こんなとこで、白衣の人って”


 そう思いながら、公園の入り口の方を歩いていくと、少し近寄りがたい雰囲気を感じた。


 そして、後ろから見張られているような視線を感じ、振り返ると、売店の年老いたおじいさんとその息子が、食料品等をトラックから荷下ろししていたところだった。この時期、コロナウイルスの感染拡大の為、住民が自由に商店に行けなかったので、地区ごとに代表者が住民の食料や物資を購入していていたのだが、恐らくそういう人たちだろうと、俊は思った。


 そして、しばらくその人たちの作業を見て、この人たちは普通の人たちだよなって思って、またその白衣を着ている人の方に歩いて行った。


 空は、まだ青々としていた。空気が澄み切るように綺麗だった。俊は、気持ちよさそうに背伸びをした。そして、そのベンチに腰掛けてみた。

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