即興速筆物語風味
@AlSKTm
第1話
ある人物はこんなことを願った。
「私が生きる意味を教えてください」
程なく聞こえてきた返事は
「そのくらい自分で決めろ」
というものだった。
求めていた答えとは大きく異なるものだ。
結局、その日は生きる意味を決めることは出来なかった。
週末、仕事から帰って晩酌をした。
酒を1杯飲み、大きくため息をついた。
「癒される。最高の気分だ。この1杯の為に生きているのかもしれないなぁ」
そう呟いた瞬間、以前に自分がした願い事を思い出した。
そういえば、「自分で決めろ」と言われていたな。
「いやしかし、毎日酒を飲む訳ではないし、これだけの為に生きてはいないだろう」
次の週末、近くの風呂屋へ行った。
自宅には浴槽が無く、湯舟に浸かりたい気分であった。
身体を洗い、湯舟に浸かり、一息ついた。
「疲れが溶けていくようだ。この時の為に生きて」
瞬間ハッとした。先週のことを思い出したのだ。
「酒と風呂の為に生きているって、どんな人生だよ・・・・」
と嘆いたが、ふと今週のことを振り返ってみた。
今日風呂屋に行くということは、先週酒を飲みながら決めたことであった。
湯舟に浸かることを楽しみにこの1週間仕事をしていた。
そして、先週末の晩酌は週の初めに決めたことであった。
先週はその晩酌を楽しみに仕事をしていたのだった。
少なくともこの2週間はこれらが生きる意味であったのかもしれない。
そう思った。
生きる意味を自分で決めていたのかもしれないと思った。
「いやでも私が教えてほしかったのはこういうことではないんだ。こんな短期的なものではなくて・・・・」
悩み込んでしまいそうになったが、今は風呂に入っていることに気が付いた。
「まぁいいや。後で考えることにして、もう少し入っていよう。」
この後暫く、湯舟の中でゆったりとした時間を過ごした。
風呂屋を出た頃には、先ほど考え事をしていたことをすっかり忘れ去っていた。
「来週は焼肉屋でも行こうかな」
そして週が明けた。
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