第5話 さっちゃんの決意
「明日ね、実はもう一人来ることになったから、よろしくね」
さっちゃんは土曜日に美織ちゃんを自宅へ招いた。当初は二人のお茶会だった。しかし前日に美織ちゃんは、さっちゃんから三人のお茶会になると聞いた。
新しい友達が増えるだろうな。
楽しみになった美織ちゃんは、さっちゃんからの急な知らせを受け入れた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
あっという間にやってきた今日。さっちゃんはわくわくしていた。
二人はお茶会の場へと進んだ。
「おいしそうな良い匂い」
「今日はかぼちゃのパイを作ってみたよ」
「早く食べたいな」
「結構自信、あります」
「それは楽し……」
美織ちゃんの言葉と足、そして目が止まった。
「え……?」
「久しぶり」
「どうして……」
美織ちゃんは目をぱちくりさせた。
「どうして、ここに……?」
それは、さっちゃんがレイちゃんに相談をした日から三日後……。
「磯西くん、幼馴染に美織ちゃんって子いない?」
「えっ、いるけど?」
「わたし、その美織ちゃんと友達なの」
さっちゃんは美織ちゃんについて磯西くんと話をした。しかし美織ちゃんの現状に関しては美織ちゃん本人が話すべきだと思ったので、さっちゃんは一切話さなかった。
「磯西くん、美織ちゃんと会いたい?」
「もちろん」
即答だった。
「わたし考えたんだけど……」
さっちゃんは考えてきたことを磯西くんに話した。磯西くんはそれに賛成し、そして今に至る。
「ずっと会いたかったよ、美織」
「で、今は第二回ってこと?」
「そういうことになるね」
その晩、急にレイちゃんがさっちゃんの家に来た。かぼちゃのパイもお茶もまだまだ残っていたので、さっちゃんはレイちゃんと第二のお茶会をすることになった。
「やっぱりこういう結論に至ったのね」
「うん」
「それはそれは画期的な……」
「そうかなあ?」
「……意図を察しなよ」
レイちゃんは呆れ顔。それに比べてさっちゃんは、
「随分幸せそうね」
「え?」
「失恋したのに」
「うん」
「少しは怒ったりとか悲しんだりとか、ないの?」
「いや怒りはしないよ。まあ全然悲しくないわけではないんだけど……」
さっちゃんは、一度お茶を啜り、また語り出した。
「それ以上に、わたしはわたしのやるべきことができたっていう、達成感があるな」
「別にさっちゃんのやることって決められてはいないけど」
「やっぱりわたしは、人の幸せを築くマホジョになりたいから」
さっちゃんの顔が、いつになく生き生きとしている……。
強い意志と幸せな気持ちが込もっている。
「……そっか」
「うん」
「……おいしいね」
「ありがとう」
二人は笑い合った。
「今日は来てくれてありがとう」
「いや、暇だったし」
「そういうこと、ないでしょ?」
さっちゃんはニヤリ。
ああ、もうお見通しなのね。
さすが親友。
レイちゃんは笑った。さっちゃんと一緒に。
「あのさ」
「なあに」
「あたしたち、考え方は全然違うけど」
「うん」
「親友だよね?」
「もちろんだよ」
レイちゃんはホッとした。さっちゃんは温かい目で親友を見ている。
「じゃあね。また来るからね」
「バイバイ」
レイちゃんは箒に乗って空へと向かい、さっちゃんは手を振った。
だからレイちゃんは、ずっと親友なんだ。
さっちゃんが心の底からそう思った、そんな土曜日の夜。
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