かかれまち。

卯野ましろ

第1話 「かかれ町」って?

 正義の味方、かわいいお姫様、すごい魔法使いなどなど。物語に登場するヒーロー・ヒロインに憧れた人たちは多い。

 しかし、スーパースターを見て目を輝かせているのは、人間だけではない。


「はぁ~、やっぱりステキ!」


 そう言いながら感動の溜め息を吐くのは、うさぎの女の子・いなばさん。彼女は今、愛読書を再読し終わったところである。


「また『かちかち山』を読んでいるのね」

「さっちゃん」


 いなばさんのもとへやってきたのは、彼女の親友・さっちゃんという女の子だ。


「憧れの方が出ている本って、何度でも読み返したくなるよねぇ~」

「うん、もう本当に大好き!」


 満面の笑みで会話する、いなばさんとさっちゃん。


「私もいつか……、『かちかち山』の老夫婦と仲良しのうさぎさんのように、ステキなキャラクターとして誰かにかいてもらうのが夢なの!」

「私は『シンデレラ』の魔法使いのようなマホジョになりた~いっ!」


 夢を語り合う、いなばさんとさっちゃん。そんな彼女たちが住む町の名前は、「かかれ町」。この町には、誰かに「書かれること」及び「描かれること」を待つ者たちが住んでいる。

 彼女たちは、人間ではない。キャラクターとしてかかれることを待っている者なのだ。

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