二百四十三話 フリーズランド3

その言葉に俺とタチアナの兄ちゃん、

青髪の青年が驚いている一方で、

俺の肩に乗っていたペルーは



「ピッ!」



と嬉しそうに今度はタチアナの肩に

飛び乗る。




「おいおい、それは聞いてないのだよ。」



「そうだぜ。今からいよいよ

魔王城に乗り込もうって時に

お前がいなくなったらどうするんだよ。」



「大丈夫。私も彼と用事を

済ませたら、直ぐにそちらと

合流する。」



「用事? さっきから気になってたが、

この回復魔法士の用事って一体

なんなんだよ。」



青髪の青年は俺に顔を向け、問いて

くる。

別に隠すことでもないかと、俺は

とある少女との約束を手短に

話した。

けれど、さすがに短くまとめすぎて

しまって、彼を納得させるには

至らないかと思ったが.........



「そ、そうが......」



と、青髪の青年は鼻水を垂らしながら

感動してしまった。

こういうところが、ますます

あいつに似ている。



俺がそう思っていると今度は

タチアナの兄ちゃんが



「しかし、それではお前は

ついていく必要はないのだよ。

第一、ただでさえ二人の

隊長が敵に囚われているのに、

お前が今、この船を降りてしまえば

職業者達を指揮する人材がますます

いなくなる。」



タチアナはこの人を実の兄ではないと

言っていたが、こういうところを

見ると彼は、本当にタチアナの

ことを妹として、そして一人の

隊長として見てるんだなと感心して

しまう。



「それはわかっている。

だが、私もこの鳥が仲間の

元に帰るのを見届けたい。

わがままなのはわかっている。」



そのタチアナの真剣な眼差しに

タチアナの兄ちゃんは少し

考えて込んでいるようだ。



実際、俺もタチアナのこの発言に

少し驚いている。

タチアナがここまでペルーの

ことを思っているとは考えても

していなかった。

確かに、エレディア村以降、

ペルーはタチアナに懐いている

ようだったし、俺が不在の時は

よくタチアナのところに一人で

遊びにいっているようだった。

もしかしたら俺の思っている以上に

ペルーはタチアナと一緒にいたのかも

しれない。



てか、あれ......?



俺はペルーが嬉しそうに

タチアナの頬に顔に擦り付ける様子

を見て、一瞬タチアナが

メグに見えてしまった。

気のせいだろうか......

いや、ちょっと待てよ......

タチアナってメグに──



「はぁ......わかったのだよ。」



「ほ、本当か!? 兄様!」



すると、結局タチアナの兄ちゃんの

方が折れてしまった。



「おい! いいのかよ、バーゼン!」



横でまだ反対している青髪の青年に

バーゼンは待ったと手を出す。



「ただし、今は一刻を争って

いるのだよ。お前が俺達の元に

戻ってくるのが遅れれば遅れるほど

それだけ仲間が死ぬ。そう思っておけ。

それだけお前には力があるのだよ。」



その言葉にタチアナは頷く。



「では、さっさと行ってくるのだよ。

俺達は魔王城に向かう。」



「兄様ありがとう!

ほら、行くぞ! 隼人。 」



「え。あ、はい。」



俺はそそくさと船を降りたタチアナ

に続くため、船から乗り出そうと

したとき、タチアナの兄ちゃんに

待つのだよと呼び止められた。

振り返ってみると、タチアナの

兄ちゃんは真剣な顔で俺を見ている。



「何ですか?」



「いい忘れていたのだよ。

隼人、よく聞いてくれ。

俺が五年前、呪覆島で見つけたのは

──」













「え......」



俺は思わず言葉を失いながらも

乗り出した自分の体は重力に

従って地面へと落ちていく。

そんな中、最後に彼は俺に告げた。



「妹を頼む。」

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