二百四十二話 フリーズランド2

揺れていた船内は次第に穏やかになり、

やがて停止した。



甲板に出てみれば目の前には一面

雪に覆われた真っ白な島が俺を

待ち構えていた。

外に出ただけでも、あまりの寒さで

体の震えが止まらなくなる。



「着いたぞペルー。お前の故郷だ。」



俺は肩に乗っている青い鳥に

目を移す。



こうやって見ると最初にあったら

頃よりも結構大きくなったな......



そう思いながら俺は再び目線を

フリーズランドに目線を移す。



「なんだ?」



「おい、なんで船が止まってんだ?」



船内から職業者達のざわつきが

聞こえ始める。

俺がこの島で降りるということを

知っているのはタチアナと

あとは何人かの隊長くらいだろう。

あまり時間も無いし、さっさと

タチアナ達にお礼と別れを告げて

フリーズランドに上陸しようかと、

辺りを見回していると......



「おいおい! お前! ほんとに

一人で行くのか!?」



と一番最初に俺に声をかけてきたのは

青髪の青年と



「どうやらこの島に用事があるよう

なのだよ。」



タチアナの兄ちゃんだった。



「んでも、お前回復魔法士なんだろ?

一人でこんな島に上陸したら

死んじまうぜ?」



まあ......そりゃそう思うよな。

この青髪の青年の言いたいこと

はわかる。



「大丈夫ですよ。敵に見つから

ないように行動するんで。」



「でも、やっぱ一人じゃお前ぜってぇ

死ぬぞ。見た目が弱っちすぎる。」



「おい、カクバ。」



「怒んなよバーゼン。ここは

本当のこと言っとかねぇと、

死んだ後じゃもうおせぇんだよ。」



「ははは......」



俺は彼のごもっともな言葉に

薄笑いするしかない。

というか、正直言って俺は

青髪の青年みたいな、

ガンガン行こうぜ! タイプとは

あまり話したくない。

というのも、俺の昔の親友にこんな

感じの奴がいた。

この青髪の青年を見ていると

そいつのことを思い出してしまう。

加えてこの人、喋り方もあいつに

そっくりなんだよな......



俺が昔の親友に思いを馳せている中、

タチアナの兄ちゃんとこの青髪

の青年の言い合いはヒートアップ

していく。

もうさっさとこの船を降りて

島に上陸してしまおうかと

考えていると......



「彼なら大丈夫さ。」



船内から荷物を抱えた

タチアナが俺達の元にやって来る。



「おい、お前までそんなこと

言うのかよ。この回復魔法士が

死んだらどうすんだ!」



「だから、その心配はしなくて

いいんだ、カクバ。」



最初は俺のことを心配してくれて

いたんだろうが、今は言い合いで

頭に血が上ってしまった青髪の

青年にタチアナは言う。

そして、タチアナはその目線を

俺に向けて言った。



「私が彼についていくからな。」




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