二百三十一話 仲間の捜索29

「や、やめろっ......この私が

人間風情に......」



長老の光の失った目を見て

本能的に殺されると悟った

ラーバは、腹に空いた穴から

絶えず流れる血を手で

止めながら必死に逃げようと

する。

そんな哀れな姿をじっと

見つめながら長老は

ラーバの後をゆっくりと追う。



「ちょーろーう!!!」



するとその時、空から

ヨーテルがほうきにまたがりながら

向かってくる。

見れば地上からもタチアナを

はじめとする仲間達が自分の

元に駆けつけてくれた。



「ラ、ラーバ!!」



当然の如くそのタチアナ達は

無惨にも地を這うラーバと、

ついでにラーバに操られ、今は

呪術が解けたおかけでその場に

倒れている元人間のモンスター達が

目に入った。

タチアナは自分のナイフに手をかける。



「......」



後ろには長老。上にはヨーテル。

隼人以外は全員が隊長という

職業者達が前方に立ち塞がり、

ラーバも流石にここまでかと



「うっ......」



腹の痛みに声を漏らしながら

仰向けになる。



「タチアナちゃん達は

なにもせんでいい。

こいつの始末はわしにやらして

くれ。」



ラーバを目にしてからずっと

警戒体勢に入っている

仲間達に長老は言う。



「ふふっ、ここまでのようですね......」



「ああ......お主の悪行もここまでじゃよ。」



「ふふっ.........ふふふふふっ!

......ですが、最後に勝つのは我々

魔族ですよ......」



「いいや、わしらじゃ。」



「根拠は?」



そう言ってラーバは不気味に

長老に顔を向ける。



「根拠......そんなもの──」



「ふふっ! そんなもの無くても

努力や友情で仲間と魔族を滅ぼして

みせると言うのですか?

......くだらない......実にくだらない......

......私にはあるんですよ。

我々魔族が、いえ!

魔王様が人間達に勝利するという

根拠が!」



するとラーバは、今度は長老ではなく

とある男に目を移した。



「ねぇ? そうですよね? カクバ君。」



その言葉に皆の注目が一気に

カクバに集まる。



「は......ま、まさかお前......

あの時俺に言ったこと......」



「言ったでしょう!!!

信じるも信じないもあなた次第

です。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る