二百三十話 仲間の捜索28

「......んあ? どこだ、ここ。」



「あ......やっと起きた......タチアナ......

カクバ......起きたよ。」



「ほ、本当か!? よかった!」



「タチアナ......」



嬉しそうに駆け寄ってくる

タチアナを見て、目を覚ました

ばかりのカクバは首を傾げる。



「やはり、こいつが一番最後に

起きると思っていたのだよ。」



「バーゼン......そうだ! お前ら

さっきあの糞魔族に!」




「......落ち着いて......」




「その魔族とやらもういないのだよ。」



唐突に怒り狂って立ち上がろうと

するカクバを鬼灯とバーゼンが

止める。




「そ、そうなのか? そう言えば、

ここジュラ島じゃねぇな。

泥んこだらけで、まるで呪覆島

みてぇだ。」



「いや、ここは呪覆島だぞ。

カクバ。」



「は、は? んなわけねぇだろ、

タチアナ。だって呪覆島はいっつも

霧が濃すぎて周りが見えねぇんだ。

それがこんなに晴れているわけがねぇ。」



カクバの言う通り、目の前に

広がるのは霧一つないどこまでも

続く湿地帯だった。




「つい先程まではそうだったんだ。

しかし、兄様達が目覚めるほんの

少し前に急に霧が晴れてな。」



「......おいおい、ちょっと待てよ。

目覚めた? どういうことだ?

いや、それよりもまずなんで

俺達はここにいるんだ?

全然記憶が......って!

そうだ! タチアナ。聞いてくれよ!

俺らジュラ島でラーバに──」



「だから落ち着くのだよ。」



「ああ、先程兄様が言ったように、

もうここにはいない。」



「じゃ、じゃあ一体どこ行っ──」



その時



「いたわよ! あの方向に

人影が見えるわ!」



空の上には自分達に大声で声を

かけてくるヨーテルの姿があった。



「なんであいつあんなたけぇとこに──」



「皆、行くぞ!」



「お、おい! 何がどうなってんだよ!」



「説明は後なのだよ、カクバ。

それに、俺もついさっき目を覚ました

ばかりでざっくりとしか状況を

把握していない。」



「そ、そうか。」



「行けば......わかる。だから......

黙ってついて来る。」



「わぁったよ!」



そう言ってカクバ、バーゼン、鬼灯は

先を急ぐタチアナ達の後を追った。

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