二百十一話 仲間の捜索19

「こんなものでわしを止めたつもり

かの?」



俺がそのでかいモンスターを倒そう

と立ち上がったとき、長老は

敵意をむき出しにした声で

ラーバにそう言ったかと思えば、

止まっていたはずの長老の腕が

ゆっくりだが、確かに少しずつ

動きだし、襲いかかってくるその

モンスターを目にも止まらぬ

拳で霧の彼方へと殴り飛ばした。



「!? そんな......!」



予想以上の長老の強さに

ラーバはおののき、逃げる体勢に

入るが、長老が見逃すはずもなく

ラーバも霧の中へと殴り飛ばす。



「お主たちはそこでじっと

しておくんじゃ。」



ラーバの動きを止める呪いから

完全に逃れた長老は、俺たちの

方を振り返り、そう言ってくる。



「ちょっと長老! まさかあいつを

一人で追うきじゃ──」



「安心せい。ヨーテルちゃん。

負けはせんよ。」



「しかし、長老。一人では

迷ってしまったときに──」



「わしにはこの水晶石があるんじゃ。

いざというときは、これで占うから

大丈夫じゃよ。」



「しかし......」



宿敵を前にした長老の気持ちを

考えれば、今すぐにでもラーバ

と戦いたいのだろうが、手負いの

タチアナがいる今、ここで

戦ってしまってはタチアナに

危険が及ぶという可能性を

考慮して、先程長老はラーバを

殴り飛ばしたのだろう。

だから今、長老はラーバを

追いたくてむずむずしている

はずだ。

なら、その気持ちを優先させて

やるしかない。



「大丈夫だろ、タチアナ。

長老は強い。負けたりしないよ。」



俺がそう言うとタチアナは

不安そうに渋々わかったと

言った。

それを聞いて長老は俺たちに

すまぬと言ってあっという間に

霧の中へと入っていった。



「本当に大丈夫だろうか......」



先程、あのラーバに二人の

仲間を失ってしまい、余計に

長老に何かあってはと不安がる

タチアナに、俺は



「信じよう。」



という言葉しか言ってあげられな

かった。

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