二百二十二話 仲間の捜索20

先の見えない霧の中を

長老は走り続ける。

ただ、闇雲に走り続けている

わけではない。

長老の右手には愛用している

水晶石があり、ラーバの

位置を占い特定してから

走っているのだ。



「しつこいですね。あなたも。」



すると、観念したのか自分から

ラーバは長老の前に現れる。



「そりゃあの。わしの仲間を

どこにやったのかまだ聞いておらぬ

からの。」



「仲間? あー、先程私が

連れ去ったあなた方のお連れさんなら

もうこの島にはいませんよ。」



「!? なんじゃと! どこかに

連れていったのか!」



「ええ。人間はいいモルモットに

なりますので。今頃、私の部下が

マッドサイエン様のところに

連行しているころかと。」



「......」



「いやー、しかし。楽しみですね。

マッドサイエン様があの人間達を

どんなモンスターへと変貌

させてくれるのか。」



長老は必死に燃え上がる怒りを

抑え、冷静に物事を考えようと

勤める。



「あ、そういえば聞きましたよ。

あなた方、ここに来る前に

三日月島にいる魚人族を屈服させた

とか。」



長老は唇を強く噛んで、怒りを

抑える。



「あの、魚どもを従えるのには

私、苦労したんですよ。」



だが、そんな長老の怒りを

知るよしもないラーバは

淡々と続ける。



「一体どうやって魚人族の長である

人魚を従えさせたのです?

弱味でも握ったんですか?」



ラーバは冗談交じりの言葉を

長老に吐くが、とうとうその

触れてはならない地雷を

踏んでしまったラーバに、

長老はぐっと拳を握って

ラーバに襲いかかる。


しかし、またあの時と同じように

長老の拳がラーバの呪いによって

止まってしまう。



「学ばぬの。わしをこんなもので......」



だが、どんなに力を込めても体が

少しも動かない。



「ふふふっ! 私は結構慎重者でしてね。

勝てない戦いはしないんですよ。」



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