二百十五話 仲間の捜索13

「なんであいつが?」



「貴重な回復魔法士の男だから

って優遇されてんじゃねぇの?」



俺の周りでそんな声が飛び交う。

まあ、ここまで来て何もできずに、

船の中で待機するなんて

悔しいという気持ちはわからなく

もない。



「隼人! 気をつけろよ。」



「隼人さん。あまり隊長達から

離れてしまわないよに。あと、

無理しないでくださいね。」



それでも牛喜さんとアルナさんだけは

俺のことを心配してくれていた。

俺は本当に選抜試験でいいメンバーに

出会えたなとつくづく思う。

この二人には生き残ってほしい。

だから、俺は船で待機している

仲間の為にも、頑張らなければ

ならない。



「ピピッ。」



部屋で荷物を整理し、最低限の

食料と水をリュックに積めていると

ペルーが俺も連れてけと鳴いてくる。



「ペルー、今回はお留守番だ。

状況が状況だ。本当に危ない。」



先程の会議であがった最も俺たちが

注意すべき点。

それは行方不明の隊長三人が

もしかしたらラーバに操られて

いるかもしれないという可能性だ。

もしもそうなっていたと

したら、ペルーを庇いながら

隊長クラスの三人を殺さずに

相手するのは厳しいだろう。



「やっぱ、あそこで殺しておく

べきだったよな......」



けれど、そんな反省など

今さらしてもなんの意味もない。

切り替えて俺が見逃してしまった

ラーバを倒すしかない。



「ピィ......」



「何かあったら牛喜さんやアルナ

さんに守ってもらうんだぞ。ペルー。

船が絶対に安全というわけじゃない

からな。」



「ピィ。」



やや寂しそうな返事だが、今は

時間がない。



「おし......じゃあ、行ってくるわ。」




俺は不安そうな表情を浮かべている

ペルーの頭をガシガシ撫でてやって

部屋を後にした。














「遅いぞ、隼人。」



甲板に出るともうすでに隊長五名は

集まっていた。



「ああ、悪い。」



「 なんですか! 隊長に向かってその

口調は!」



「いいんだ、ルドルフ。

私がそうしろと彼に言ったのだから。」



タチアナの発言に、は? と

弓使いの隊長は言っているが

俺は構わずに彼らの後ろに

つく。



「では、行くとしようか。

後のことは任せたぞ。ドッペ。」



「はい。」



タチアナは自分の部下に船のことを

任せると、一番最初に先陣を切って

呪覆島に上陸したのだった。

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