二百十話 仲間の捜索8

香ばしい焼き魚の匂いに誘われ

食堂の席につく。



「ひさびさにちゃんと朝飯が食えるな......」



ここ最近、森で迷子になったり

谷に落ちたり洞窟を走ったりと

なかなか船内での食堂で朝食に

ありつくことができずにいたが、

今日はひさびさにゆっくりと

食べらそうだ。



「こら、ペルー。そうがっつくな。」



俺はペルーの皿に魚を

分けてやろうとしたが、

ペルーも腹が減っていたようで

もうすでに魚をつっついている。

ペルーを一度膝の上に乗っけて、

皿に魚をのせる。



「ほら、いいぞ。」



「ピッ!」



俺のよしという声と同時にペルーは

魚に食いついた。



さて、俺も食うかな......



「いただきます。」



うん、うまい。塩が効いてて

ほんとめちゃくちゃうまい。



最高だ。実にいい朝だ。ただある

ことを除いては......



「あの......何か......?」



「別に......」



その人は俺が飯を食っている

様子ただじーっと見つめてくる。



「......め、珍しいですね......

あなたが俺たちと朝食を

取るなんて......」



俺はあまり刺激しないように、

慎重にその人の表情を伺う。



「ヨーテルさん......何か俺に

用ですか?」



そう。俺が食堂の席に座るやいなや、

滅多に人の前に現れない彼女が

俺の目の前に座ったのだ。



「は? なわけないでしょ。」



「......そ、そうですか......何も食べ

ないんですか?」



「うっさいわね。黙って食べなさいよ。」



「は、はい......」



な、なんだよ......俺が何したって

言うんだよ......



俺は緊張しながら、大人しく

朝食をとり続ける。



気まずい......普通に飯食いたい......

なんでこの人ずっと俺のこと

見てんだよ......

まあ、多分あれが原因だろうけど......



あれとは昨日の夜タチアナから

聞かされた、俺のレベルが

隊長達にバレたということである。

もちろん、その隊長達の中には

このヨーテルという人は入っていた

わけで、おそらくそれで

不審に思ったのか、それとも

興味を持ったのか、いずれにせよ

俺を監視しているのだろう。



「御馳走様でした。行くぞペルー。」



まあ、ただ監視する程度なら

気にすることもない。

俺はささっと飯を食べ終え

ペルーに声をかける。

ペルーもちょうど食べ終わったようで

ぴぴっと満足げに返事をした。

そして、俺は一応この人は隊長なので

ぺこっと軽く頭を下げ、その場を

離れようとしたが......



「ちょっと待ちなさい!」



彼女は俺を逃してはくれそうに

なかった。

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