百八十五話 海底の城10

すると、話し終えた人魚姫は

おもむろに立ち上がった。



「ひ、姫様?」



「人魚姫様! き、危険です!

まだ目覚めて間もないのに......」



人魚姫の唐突な行動に

ご老人とワインは慌てる。



「どこに行かれるというのです。」



「そんなの決まってるじゃない。

エレディア村にいるナギのところよ。」



「ナギというのは姫様を刺したという

人間でございましょうか?」



「違うわ! ナギは操られていたのよ!

ナギは無実よ。私がそれを証明してみせる。」



「証明? どうされるのです。」



「ナギに直接会って話を聞くのよ。」



そう言って、しがみついてでも

止めようとするご老人を必死になって

人魚姫は振りほどこうとする。



「ちょっと待った......!」



するといきなり、ずっとおとなしく

話を聞いていたヨーテルが口を開く。



「あんた......そのナギに会いに行くって

正気?」



「そうよ。もしかしてまた刺される

んじゃないかって心配してるの?

だったら大丈夫。言ったでしょ?

ナギはきっと魔族にあやつら──」



「そうじゃないわ。」



「だったら何?」



ヨーテルは真剣な表情の人魚姫を

まじまじと見る。

そして、彼女は冷笑しながら、

冷たく言った。



「あんた......人間の寿命って知ってる?」



「................................................」



「そのあんたを刺したっていうナギって

人間なんでしょ?」



「................................................」




「あんた。自分がどれくらい眠っていた

か、さっき言われたのに忘れたの?」



「.......................................」




「いいわ。受け入れたくないんだったら、

私が無理矢理にでも教えてあげる。

そのナギっていう人間はもう──」



「やめて!!!!!!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る