百八十六話 海底の城11

「やめて......お願いだから......」



人魚姫は顔をおさえながらその場

に崩れ落ちる。



「ヨーテルさん。少し

言い過ぎでは?」



俺はこれ以上、この人が追い討ちを

かけないように注意に入る。



「遅かれ早かれ知ることになるわ。

むしろ、ここで私たちが教えて

あげない方が残酷よ。」



「ひ、姫様!」



ご老人、ワイン、ビールは

すぐさま人魚姫に駆け寄る。

だが、どんなに彼らが声を

かけても、人魚姫は

ぴくりとも反応しない。



「はぁ......これは長くなりそうね。

一応、あんたにもかけとくわ。

スカイリム。」



「どうも......。」



俺は魔法をかけられながら、

膝をついて泣いている人魚姫を

見つめた。



そりゃ辛いよな......

俺はそのナギって人と人魚姫が

どんな関係だったのか

知らないが、さっきの

話を聞いただけで相当仲が良かった

ように思える。

そんな大切な人が魔族に操られ、

今では魚人族の中で復讐対象

にされて。

加えて、百年後に自分が目覚めた今、

その人はおそらくもうこの世には

いないなんて現実を目の当たりに

すれば誰だってああなるだろう。




「姫様! 姫様! お気を確かに!

姫様!」



せめてそのナギって人が生きていればな......




ご老人の必死な叫びが海の中で

振動する。




あ...... そういえば忘れていた。

頼まれてたことがあったんだ。



「人魚姫様。」



俺は人魚姫に歩み寄る。

返事はない。



「言伝です。」



俺はここに来る前に言われたことを

そのまま人魚姫に告げた。












「......そ、それ一体誰から......」



「? ここに来る前、陸の上でとある老人に。」



「老人? 本当?」



さっきまで泣いていた人魚姫は、

泣くのをピタッと止めて俺に問う。



「......ええ、本当です。」



さっぱりこの言伝の

意味がわからない俺に対して

人魚姫は何かがわかったようだった。



?......人魚姫はこの言伝の

意味がわかったのか?

こんな言伝にどんな意味があるんだ。

そもそもこの言葉をなんで

長老が人魚姫に伝えて欲しかったんだ?

こんなことをわざわざ頼むんだ。

何か意味がある......

それにこの人魚姫のうれしそうな顔。

なんでこんなにうれしそうに

してるんだ。さっきまで泣いてたはず

なのに。

そんなに、この言伝がうれしかった

のか?

ということは人魚姫と長老には

何かしらの接点が........................!?



俺はようやくそれに気がついた。



「ばーや。今から私は陸に向かいます。」



と同時に人魚姫は言ったのだった。





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