百六十九話 三日月島34

「タチアナちゃん。あの魚人達は

どうしたんじゃ?」



「彼らは......いや、それよりも長老。

その肉片は幹部なのですか?」



「そうじゃ。水を操る厄介なやつでの。

まあ、わしが来たときは地上に気をとら

れておったおかげで、楽に倒せたわい。」














長老が幹部のアグリーを倒した、ほぼ同時刻




「ヨーテル様!」



「わかってるわよ!」



陸の上ではヨーテル一行が謎の

黒海に追い詰められていた。

自分達よりも遥かに高いその

黒海はヨーテル達の逃げ場を無くし、

完全に飛行している船を包囲する。



逃げられない



ヨーテルがそう諦めた、その時。



真っ黒に染まっていた黒海が、みるみる

うちに元の色をした海に戻っていく。



すると、船を包囲していた黒海は

まるで力を失ったかのように、

ヨーテル達の真上に滝のように

落下してきた。



「こ、今度はなんなのよ!」



ヨーテルはその海の重さに耐えきれず、

力尽きてしまい、飛行していた船は

そのまま三日月島の陸へと墜落

していった。













「さ、流石です。ですが他の者は?

何故一人で幹部の討伐に?」



「それは、皆にはすまないんじゃが、

一人の方が行動するのに楽での。

それに大勢で移動しては幹部に感ずかれて

しまう恐れもある。じゃから、わしだけ

船の上で幹部の居場所を占って

一人で来たんじゃ。まあ、しかし、

ここはいりくんでおって、この場所に

たどり着くのに苦労したがの。」



そう言って長老はふぁふぁふぁと笑う。



「そうだったんですか。

しかし、長老。大変です。

私も先ほどあの魚人達から聞いた

のですが、現在陸上で仲間が脱走し、

魚人と交戦中のようです。」



「本当か。うむ......船のことは

ルドルフ君に任せておったん

じゃがの......やはり、彼には

荷が重すぎたようじゃな。」



「急いで我々も駆けつけましょう。」



「そうじゃな。」



「ぼさっとしている暇はない、隼人。

行くぞ。」



「え、はい。」



すっかり、タチアナはリーダーとしての

真面目モード全開に戻っていた。



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