百六十八話 三日月島33

「!?」



タチアナはその謎の断末魔を

聞くやいなや、即座に扉を開け

中に飛び込む。

俺もあとに続いて中に入った。



「ん?」



そんな俺達を待っていたのは




「タチアナちゃん?」



「ちょ、長老!?」



一人の老人だった。













「な、何故ここにいるのです?」



「それはわしが聞きたいの。

いや、それよりもまず無事で

よかったわい。」



しょぼしょぼな目をタチアナに

向けなから、長老と呼ばれている

男性が近づいてくる。



「おや......確かそっちは

タチアナちゃんと一緒に

迷子になっておった......えぇと......」



「隼人です。」



「おお、そうじゃった、そうじゃった。

すまぬ、すまぬ。回復魔法士じゃったの。

そうか二人とも一緒に行動しておったのか。」



「申し訳ない、長老。心配をかけて

しまいました。」



「いいんじゃ。タチアナちゃん達が

無事でよかったわい。それより、

一体どうしてここにおるんじゃ?」




「私たちはこの隼人と共に、

ジュラ島の地下にあるエレディア村から

海底洞窟を通ってここまで来たのです。」



「ほほぉ......エレディア村から......」



「知っておられるのですか?」



「あ、あぁ......昔の......」



「あ! そういえば長老。

今しがた、なにやら獣のような

声が聞こえてきましたが、あれは

一体......」



「おお、それはこやつの悲鳴じゃろ。」



そう言うと長老はなにやら気持ちの

悪い赤みがかった肉片の塊を

指差した。



「長老。あれは一体なんです?」



「アグリー。幹部の亡骸じゃ。」



「か、幹部様!?」



するとずっと俺の後ろで

タチアナと長老の対話をこそこそ

聞いていたビールが転がりながら

出てくる。




「ん? 魚人もおったのか。」



「お、お、おい!! 糞人間!

よ、よ、よ、よくも!

俺たちの幹部様を!」



「や、止めろってビール。

殺されるぞ!」



そう言って今にも長老に襲いかかり

そうなビールを、ワインは扉の

外へと連れ出した。

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