百五十九話 三日月島24

「アルナ!」



「牛喜さん!」



牛喜とアルナは檻ごしに、

再会を喜び合う。



「アルナ。」



「ドッペさんも無事でよかったです。」



アルナの先輩であるドッペも

嬉しそうに立ち上がった。




「ど、どうしてあなたが──」



「ごめんなさい。今はいろいろ説明して

いる暇はないんです。」



ルドルフの質問を無視して、アルナは

斬った魚人兵の腰から檻の鍵を奪い取り、

皆が捕らわれている檻を開けた。



「よくぞやってくれた。我輩、アルナが

助けに来てくれると信じておったぞ!」



牛喜は心底嬉しそうに

アルナの肩を叩く。



「い、いえ。いいんです。それよりも

皆さんここから脱出しましょう。」



「そうだな!」



「そういえばアルナ。俺らの

武器知らない?」



「武器ならその角を左に

曲がって、二番目の倉庫に

ありましたよ、ビルメ。」



「お、ありがと!」



そう言うと、檻から出た一行は、

各々の武器をその倉庫に取りに行く。




「そ、それと皆さん!」



するとアルナは何だか申し訳なさそうに

口を開いた。



「もう敵には結構前からバレて

しまっているので

気をつけてください。」



そう。実はアルナはここに

来る途中に、岩に隠れていたところを

魚人兵に見つかってしまい、

ここまで強行突破してきたのだ。



「いたぞ! やはり、脱走している!

一人も逃がすな!」



と同時に、アルナ達は加勢してきた

魚人兵達に包囲されてしまった。




「了解したぞ! よし、皆!

ここは力を合わせて乗りきろう!」



武器を倉庫から取り戻した

職業者達は牛喜の声に答えるように、

魚人兵達と戦闘を開始したの

だった。












「遅いわね、アアルナ。何かあったの

かしら......見つかってなければいいけど。」



夜の闇に身を潜め、ヨーテルは

アルナ達が洞窟から出てくるのを

じっと待つ。



ちょうどその時



何やら洞窟の中からどたばたと足音が

地鳴りのように聞こえてくる。



「来たわね。」



ヨーテルはほうきにまたがり、船が

沈められた海面に向かう。



「この辺だったわよね。」



そういうとヨーテルはほうきに

またがりながら、右手を船が沈んだと

思われる方向に向け、目を閉じる。



ブクブク......ブクブク



すると、そこからいくつもの泡が

絶え間なく海面に沸いてくる。



そして



ザッバン!!!!



船内に海水を溜め込んだ

船が海から姿を現したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る