百五十六話 三日月島21

「はぁ......まぁでもしょうがないわね。

いいわ。船は私がなんとかする。」



「え? どうやるんです?」



「忘れたの? 私が船を浮かせられるの。」



「ま、まさか海の底から船を持ち

上げるんですか!?」



「そうよ。でも、それをするのは

あの捕まった奴らを助け出した

直後ね。今、船を海から持ち上げても、

あの正体不明な影が何をしてくるか

予想がつかないわ。最悪、私達の

居場所も船を持ち上げてる最中に

見つかるかもしれないしね。」



「わかりました。では、捕まった皆さんは

いつ助けるんですか?」



その質問にヨーテルはうーんと考え込む。



「ちんたらしてたら、使者が

来てしまうわよね......かといって、

こんな明るい中であいつらを

助け出しても、魚人兵に見つかったら

面倒だわ............。決めたわ。

今日の日が落ちた夜にしましょ。」



「わ、わかりました。」



「じゃ、よろしくね。」



「え?」



「え、って。あなたが助けに行くのよ?」



「え!? ヨーテル様は?」



「聞いてなかったの? 私は

船を持ち上げるっていう大事な任務が

あるのよ。私はあなたが捕まった連中

を助け出して洞窟から出てきたのを

確認したら、直ぐに船を海から持ち上げて

迎えに行くわ。いいわね?」



「そ、そんな......私一人でだ、大丈夫

でしょうか......」



「あー、ごちゃごちゃうるさいわね。

あなただってこういう緊急事態が

起こると分かっててあの選抜試験

を受けたんでしょ? 」



「......はい。」



「なら、今さら不安がらずに

ちゃっちゃと任務を果たせばいいのよ。

あなたが失敗すれば捕まった連中は

全滅。成功すればみんな助かる。

それだけのことよ。わかった? 返事は?」



「は、はい! せ、精一杯やってみます。」



その言葉にヨーテルは満足そうな

顔をする。



「それじゃ、助け出すプランとかは

自分で考えてよね。洞窟からあいつらを

連れ出せたら、後は私がなんとかするわ。」



「了解しました!」



「......そういえば、あなた名前は?」



「あ、アルナと申します。」



「......覚えておくわ。」



アアルナって変な名前ね......




ヨーテルは心の中でそう思ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る