百五十二話 三日月島17

「よし、息の続かなくなった人間から

地上に連れていけ! 殺すな。

こいつらは全員、魔王様への献上品

だからな。」



職業者達を海の中で待っていたのは

無数の魚人兵だった。




兵団の長であろう魚人の命令で、

魚人兵がヨーテルの周りで溺れている

他の職業者達に群がっていく。



「......っ!!」




すると、まだ僅かに呼吸を我慢している

職業者に近づいた魚人の一人が、

その職業者の腹を蹴った。



「......い、息が!......」



その職業者は、蹴られた衝撃で

海水を飲み込んでしまった。



「へ。 水中で呼吸もできねぇ人間が。」



「おら! どうした! さっきみてぇに

炎でもぶっぱなしてみろよ!」



意識の失った職業者を、他の魚人兵が

面白がって暴行を加え始める。



「おい、聞いていたのか? 殺すなよ。」



「は、はい! おい。連れてくぞ。」



「お、おう。」



そう言うと三人の魚人兵は

ぐったりとしてしまった職業者を

海面に連れていってしまった。






なんなのよ。こいつら......





ヨーテルは身を潜めてその様子をじーっと

見ていた。




「ほら急げ! 人間が死んじまうぞ。」




再び、魚人兵の長の命令がかかると、

ルドルフや牛喜を含む、

ほとんどの職業者達が意識を失った

状態で地上に連れていかれた。



「......」


ふと見るとヨーテルの隣ではまだ

必死に呼吸を我慢

しているアルナがいた。



「スカイリム。」




ヨーテルはそれに気がつくと

水中呼吸魔法をかけてやる。




「はあ......はあ...... い、息ができる......」



「ば、バカ! 声出すんじゃ──」



「指令! ここに息をした人間がいます!!」



その声にぎょろりと無数の魚人兵の

視線がヨーテルとアルナに集まる。




「あ、あんたね!」




「ご、ごめんなさい!!!!」

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