百五十一話 三日月島16

「おい、何で船がこんなに揺れてんだよ!」




「そんなの俺が知るわけねぇだろ!」




ヨーテルが戻った船内は、

パニックに陥っている職業者で

溢れかえっていた。



「ヨーテル様。この地震は一体......」



アルナも不安げに駆け寄ってくる。




「わからないわ。でも、上空から見ても

魚人の姿がひとつも見えなかったから、

多分魚人の仕業じゃないと思うけど.....」



「けど?」




今、ヨーテルはこの揺れのことよりも、

先ほど見た船の下の黒い影の方が

気になっていた。




「ジュラ島近辺に生息している

巨大魚でも迷いこんだのかしら。」




そう考えていたその時だった。




「津波だ!!!」




一人の職業者がそう大声を上げた。



「!?」



ヨーテルは咄嗟に顔を上げる。



するとそこにはいつの間にか

海の壁ができていた。




「こ、こんなのいつから──」




津波というより、巨大な海の壁が

船を四方八方から包囲している。



もう、逃げられない。




ヨーテルを含む、職業者全員が

そう悟った。



悲鳴を上げる者、恐怖で動けないもの、

失神するもの。

絶望に打ちひしがれている職業者全員を、

その海の壁は容赦なく飲み込んだ。




まるで巨大な手のように、

海の壁はより深く、海に船を引きずり

込んでいく。




「スカイリム。」




そんな中、ヨーテルは自身に

水中呼吸ができる魔法を

かけた。



「一体なんなのよ!」




ヨーテルはややイライラしながら、

辺りの状況を把握しようと、

薄暗い海に目をこらす。




「!?」




海の中で職業者達を待っていたのは、

投石よりも残酷なものだった。

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