百二十八話 一方海では2

夜が更け、船に乗っていた者達が

全員寝静まった頃。



いくつもの不気味な影が、停滞していた

船に近づいてくる。



そのいくつもの影は船を覆うように、

円形に広がる。



すると、その影の一つが海面から

顔を覗かせ、口に咥えている筒状の

物を、船の一番上で、見張りをしている

者に向けた。




そして




ヒュッ



とその影は見張りの者の頭を撃ち抜いた。



ポチャ



その謎の影は再び海に潜り、他の影に

指示を出す。



指示を受けたいくつもの影たちは、

船の真下へと姿を消していく。



ガチャ



手際良く、影の一つが船と錨を繋いで

いた鎖を切断した。




そして、停滞していた船は、

人知れずゆっくりと何処かに運ばれて

いった。















その異変に気がついたのは、朝方に

なり、太陽の光を浴びて朝の

運動をしようと起きてきた、牛喜だった。



最初は船がゆっくりと動いているという

ことに気づくはずもなく、ぐぅーっと、

体を動かしていた牛喜だったが、

自分の真上から何か赤い液体が

降ってきたことで、反射的に

上を見た。



「みんな! 起きろ!」



船の見張り台で頭を撃ち抜かれ、

死んだ仲間を発見した牛喜は

大声をあげた。



すると、牛喜が大声を上げたことにより、

仲間も飛び起きて続々と集まって

来たが、ゆっくりと気づかれないように

運ばれていた船が突如、



ゴゴゴゴッ!



と音を立てて驚異的なスピードで

運ばれていく。



「どうなっているんですか!」



寝ぼけて起きてきたルドルフも

流石におかしいと慌て出す。



「わかりません。ですが、おそらく

我輩が起きる前からこの船は

何処かに移動していたようで──」



「移動? まさか......船が勝手に動く

はず......錨だって昨日しっかりと

降ろしたはずでは......」




職業者達が不審に思い、錨を

引き上げてみると、

それは無残に切断されていた。




「隊長! 錨が何者かによって

切断されています!」



「!?」

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