百二十七話 一方海では

時は少し遡って、ジュラ島近辺の

海上では......



「ふぅ、これくらい離れれば問題

ないかしら。」



「うむ。見たところ、海面にも

巨大な生物の影は見えんの。」



「どうやら、安全な場所まで

来たようですね。」



「ヨーテルちゃん、船を下ろしても、

問題ないぞい。」



「わかったわ。今日は私の

魔力回復の為にここに停滞する

ということでいいのね、長老。」



「うむ。」



「いやー、お疲れ様です。」



長時間、船を魔法で浮かせて

いたヨーテルがようやく一息つけると、

船に下りてくると、ルドルフはニコニコ

しながら言ってくる。



「うっさい。話しかけないで。」



「ひ、ひどいですねー。」












「はぁ......タチアナ様大丈夫かなー、

ねぇ、アルナ。」



「大丈夫ですよ、ビルメ。私達の隊長が

こんなところでやられるはずが

ありません。きっと無事です。

......ただ......」



「ただ?」



ビルメと一緒にジュラ島の方角を

眺めていたアルナは、言葉に詰まる。



「大丈夫さ、アルナ。

きっと隼人も無事だ。」



「牛喜さん......本当にそうでしょうか。

もしも、隼人さんがあの島で

一人でいるのなら、今頃大型生物や、

あの謎の物体に襲われているじゃ──」



「アルナ。そう悪い方向に物事を

考えるんじゃない。」



ビルメの隣で同じように、

海を眺めていたドッペが言う。



「はい......」



「我輩もあの三人と一緒に

捜索に加われたら......」



アルナを励ましていた牛喜も、

悔しそうにそう呟いた。




「みなさん。お食事の準備が

できましたよ。」



すると、不安がっている四人の後ろから、

サッちゃんとテイルが声をかけてきた。



「大丈夫です。今あの島では

カクバさんとバーゼンさん、鬼灯さんが

二人の捜索をしてくれています。

きっと見つかりますよ。

それに、ずっとそんな調子では

体を壊してしまいますよ。

ここは一つ、美味しいご飯を食べて

体力回復に勤めませんか?」



「飯だよ! 飯!」



不安がっていた四人は、テイルの無邪気な

笑顔に思わず少し、微笑んだのだった。

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