四十八話 選抜試験7

「なんだよ、呆気ねぇな。

あんな男なんで選出したんだよ。」




「だから、私はレベルの高い順に

選出したって言ったでしょ!?

何? なんなのよその目は。

なんか文句あるの?」



「いや……別に文句はねえけど。」




「レベルなんてあてにならない。」



ヨーテルの睨みに少し弱気になった

カクバの代わりにタチアナが口を

開いた。



「レベルは高くても、戦闘の

才能、その人間の力量までは

測れないさ。

第一レベルは、活躍していなくても、

戦闘に参加していれば皆均等に

上がる。だから、ろくに戦わず、

後衛でレベルだけを上げてきた

人間は本当に修羅場をくぐってきた

者には絶対に勝てない。

今のがいい例だろう。

きっとあの鼠とかいう魔法使いも

その類だ。

逆にあの影蜘蛛は相当の

猛者だろうな。

な? 鬼灯。」



「……ん……もっと撫でて……」



タチアナに頭を撫でられ

鬼灯は上機嫌だった。












やんべ……どうすんのこれ……



訳のわからんフード男のせいで、

俺の班は今、危機に陥っていた。


この鼠とかいう男が負けたせいで、

現在、俺達の班が所持している

バッチは一個。

つまり、もしもう一回負ければ

バッチをもう一個失う。

そうなれば他の班に戦闘を申し込んでも

了承されることなく、

言い換えれば、失格ということに

なってしまう。



「まいったな……」



「そうですね……」



牛喜さんとアルナさんもこの状況に

頭を悩ませている。



問題はもう負けられない

次の決闘を誰がするか、

そして誰に申し込むか、なのだが、

正直ここで誰かが負けるくらいなら

俺が少し本気を出して

まじで勝ちにいきたいところだ。


それに、回復魔法士は回復魔法士同士

でないと戦えないという

嬉しいルールがある。


見たところ俺以外の班にいる

回復魔法士は全員女のようなので、

俺のレベルを明かさずに

勝っても不審に思われる

こともないだろう。



「あの、次俺がいって――」



俺は二人に俺がいきたいと申し出た

時だった。



「きぃ〜み! 私と決闘しよう!」



別の班の陽気な回復魔法士が

俺に決闘を申し込んできた。


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