四十九話 選抜試験8
「あ、テイルちゃんだ。」
選抜者達が戦闘を繰り広げる中、
上階で椅子に座っていた
サッちゃんがその
回復魔法士を見て言った。
「なんじゃ、知り合いかね?」
「はい、私の次にレベルが高い
回復魔法士です。」
「ほほぉう。随分と……
元気な子じゃないか。」
肩を回しながら隼人に戦闘を
申し込む彼女の元気さに長老は
少し引いている。
「でも、あなたの次ってことは
どうせレベル330くらいでしょ?」
ルドルフはニヤニヤしながら
口を挟んでくる。
「……レベル280です。」
サッちゃんは情けなく、
言ったのだった。
「いいですよ。」
またとない絶好のチャンスで
俺は快く彼女の申し出を受けたが、
ちょっと待ったと二人が止めに入る。
「待ってください。ここで隼人さんが
負ければ私達は終わりなんですよ?」
「そうだ、我輩、何もせぬまま
終わりたくはない。」
「じゃあ、あなた達が
いきますか?」
俺は少し挑発的に言ってみた。
すると、二人はうっ……と何も言い返せ
無かった。
当然だ。負けたらその責任は
自分が負わなければいけない。
それに、絶対に勝てそうな者など、
選抜されたこの中の職業者には
まずいない。
ならば、単純に男と女の力の
勝負になるであろう回復魔法士同士の
この戦いの方がまだ勝算はある。
そんな考えが二人にもあった
ようで、頑張ってくれ、
頼むから負けないでくださいと
渋々言われた。
「お、回復魔法士同士の
戦いじゃねぇか!
おい、サッちゃん!
あの二人はどんな奴らだ?」
「女性の方はテイルちゃんって言い
ます。とても元気で良い子です。
もう一人の男の人は……ごめんないさい、
わからないです。」
「回復魔法士で男とは
珍しいのだよ。」
「ふむ……回復魔法士に
男がいるのはとても心強いの。」
「……? どうしたの……タチアナ……
変な汗かいてる……」
「えっ!? そ、そうか!?」
正体不明の隼人が
帝国精鋭隊の中で話題に上がる中、
一人その男と面識がある者が
嫌なものでも見たかのような顔を
していた。
「どうしたのだよ。顔が少し
赤いぞ。」
「べ、べ、別に! 兄様の
見間違えだ!」
様子のおかしいタチアナに
他の七人は不思議な目を向ける。
「ほら! そんなことより、
彼らの戦闘が始まるぞ!」
恐らくタチアナは隼人を見て
あのことを思い出したのだろう。
あのことを。
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