九話 胸の内

回復職への手続きも終わり、衣服に

着替え、お金が無いのでそこらへんで

野宿して俺の異世界

生活一日目は終わった。



今日得られた情報をまとめると、

今回の異世界のクリア条件が見えてく

る。

まぁ要するにこの異世界で魔王を討伐

すれば、俺はまたあの爺さんの待つ

白い部屋に戻され、再び別の異世界に

転生させられるということだ。

俺はそうやって何千回も異世界転生を

しては世界を救ってきた。

もちろん最初の転生ではレベルも1で

全く敵を倒せなかった。

第一異世界という存在自体が認められ

なかった。

そうこうしながらも、いろんな敵を倒し

ては強くなり、いろんな人と協力して、

いろんな人と出会った。

中には親友と呼べる者や恋をした人も

いた。

けれども、俺がどんなにその異世界で

暮らしたいと思っても、世界の危機を

救ってしまえば、また白い部屋に

戻され一からやり直しになってしまう。

唯一の救いだったのは、前の異世界で

強くなった体は次の異世界でも受け継

がれるということだけだった。

でも、強くなりすぎてしまえば

一人で戦えるようになってしまう。

一人で戦えるのなら仲間なんて

別にいらないし、それはそれで

俺にとっては好都合だった。




なぜなら、仲良くなったって、

世界を救ったと同時に別れが訪れて

しまうのだから。



だから俺は、回復職という目立たない

職業についてなるべく人と関わらない

ように世界を一人で救っていこうと

決めた。

その方が後が辛くないから。

実際、一人で世界を救える力は

俺にはあると自負しているし、

これまでもそうしてきてた。

転生してはクリア条件を探り、

特定しては一人で片付けてきた。

仲間と協力する必要もない。

別れを惜しむこともない。

これからも俺はこの逃れられない

連鎖の中で、生きていくしかない。


いつか、全ての異世界を救って

日本に帰れる日が来るまで……ずっと。

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