六話 契約
「あんちゃん……見ない顔だな……
異国の人間かい?」
酔っているせいか瞼を重そうにしなが
ら一緒におつまみを食べていた中年
男性が俺に話しかけてくる。
「えぇ……まあ、そんなところです。
本当はこの緊急任務のために来たわけ
では無いんですが……。」
「なんだぁ、あんちゃんもかい?
ワシもいつもここで飲んでるから
来ただけなんだよ。」
そう言うと何が面白いのか
分からなかったが、中年男性は
口を大きく開けて笑う。
「静粛にと言わなかったか?」
すると任務内容の詳細と打ち合わせ
を集まった人々に話していた
彼女がこちらの席をにらみつける。
「あ、あんまり大きな声出さないで
くださいよ。」
「アハッハ、すまんすまん。」
中年男性は反省しているのかいないのか
頭をかきながら、ぐびぐび酒を
飲んでいく。
「ところで、あの……」
「ん? あぁ、わしのことはガビル
と呼べばいい。」
「ガビルさん。さっきあの女性が
言ってた幹部って何なんですか?」
「んん? あんちゃん、まさか魔族の
こと知らないってのかい?」
俺がそれに頷くと珍しいものでも
みたかのように目を点にする。
「あんちゃんは一体どっから来たんだ
い?」
「日本という国です。」
「日本……? 聞いたことないな……
わしもあまり異国のことには詳しく
無いが……まぁあんちゃんは相当
遠くの国から来たんだね……。じゃあ
今この国がどんな状況かも知らな
いと。」
「そうなんです。」
「ならあんちゃん、わしがこの
国のことと緊急任務について教えて
やろうか?」
「いいんですか!?」
「その代わり……酒を奢ってくれ。」
「……今俺お金持って無いんです……」
「お金を持ってない!? 本当に?」
俺は躊躇うことなく身につけていた
コートを脱いで俺がお金は愚か、
武器や防具、食料や金目の物を
持っていないことを見せる。
「……驚いたな……あんちゃん、
そんな装備でこの任務に参加するの
かい?」
「下の受付嬢に頼まれまして……」
「アッハハ、ハルナか、ハルナは
見た目は若いが中身はおばさんみたい
だからたまに無理難題を押し付けて
くるからな、そうか、そうか
ハルナに頼まれたか。」
ガビルさんは笑い終えると俺を
マジマジと眺める。
そして彼はこう言った。
「でも、ハルナは人の見る目は
確かだからな……よし! 決めた。
あんちゃんにかけよう。」
「……?」
「あんちゃんにこの国と緊急任務につ
いて教えることにする。」
「いや、でも俺お金が……」
「お金はあんちゃんがこの任務に
行けば、十分貰える。
その後でわしにたぁんまり酒を
奢ってくれ!」
そう言うとガビルさんは顔のしわ
を更に誇張させるように
笑ったのだった。
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