第27話 終わりの始まり
会議も終わったことだし、これからどうするんだろう、と思っているとクリスとマルクが走って迅らを呼び戻しにくる。
迅はマーナとともに案内され通された部屋の中をみて、そこが何するところなのかを把握する。部屋中央にある見覚えのある色を発しながら回る球体。
「今きます」
クリスの声とともに球体がカラフルな色を放ちだし、久しぶりの声を聞く。
「おーい。聞こえる? マー姉、迅さん」
「久しぶりね、レンカ。迅さんもここにいるわ」
「クリスさんから聞いたわ。やったね! マー姉」
「ほとんど私は何もしてないんだけど。そうね。まずは第一歩ね」
「さっそくなんだけど、迅さんだけでも戻れない? 」
「なにかあったの? 」
「帝国の対応が不気味だって、この前話ししたけど、すぐにでも動きそうなの。それと関係あるかわからないけど、キクリの様子がおかしいのよ。『あああ……泣いている……多くの……泣いている』っていって突然泣き出したの。迅さんわかる? 」
……キクリのチカラが透視関連だと、仲間のエボーが苦しんでるのが視えたのか。それとも未来視のようなもので、今後どこかで起こりえるビジョンが視えたのか……
「レンカさん、キクリに、苦しんでるのは人族か、それ以外かわかるか聞けますか、それと場所とか……」
通話の途中で急に声と共に球体の色が消える。会話していない時の落ち着いた色さえ消え、振動とともに誰もが想像だにしていなかった音が響く。
「聞こえるか…………とるに足らぬものを殺したぐらいで、こそこそと嗅ぎまわりおって…………我は帝王デブロス……魔法をこなせるからと我を下にみよるなよ。……準備は整った。我の前に跪くならば受け入れよう。拒むのならば容赦せぬ。どのような方法でも構わぬ。二日後までに返答せい」
一方的に割り込み話し、一方的に通話をきった。
「な…………」
その場の者全員が絶句する。
……よくない状況だ。先手を取るつもりが後手に回りつつある。
それが切っ掛けで慌ただしく事態は急変していく。なにぶん距離のある帝国への対策にも、準備するだけで時を要し、無情にも時は流れ、三日後の朝、突然にそれは起こる。
龍国、神聖国、亜人国、エルフ国同時に攻撃を受ける。
その砲弾は空から突然姿を現し、つぎつぎとエルフ国内に被弾し、地鳴りと共に轟音が響く。通信により、他国も同様攻撃を受けていると聞き、迅とマーナが長老の部屋へ向かい、到着していた時だった。
「喝ああああっつっ!!!! 」
「「カアアアァッツ!! 」」
長老の咆哮ともとれる掛け声と、続く重鎮らにより、障壁の輪のようなものが幾重にも広がっていく。それはひろがるに連れ、木々や大地の精を吸収するかのように厚みをおび、里全体に拡がり超巨大な結界を完成させた。
「マーナ。そして迅とやら。行ってきなさい。ここにいても終わりがないぞよ。大丈夫じゃ暫しの退屈しのぎにはもってこい……だでの。ふぉっふぉっふぉっ」
『ひょっひょっだいじょぶじゃ』『いってこい』……
最低限の軍を残し、迅、マーナらは旅団を引き連れ出発する。
外から見るその結界は砲弾を防いでいた。はじくというより一旦威力を吸収してそのまま落とす感じにみえた。
なるほど……壁で受けるというよりネットだな。確かにそのほうが持続しそうではあるが、あの爺さん、一瞬の間にこの判断と結界。恐るべし……
一角の馬に乗り、クリスの背中に振り落とされぬよう、しがみつきながら迅は考える。
あの砲弾はテレポートしてきてるんだな。しかも他国同時に……『ヤな噂』とはエボーを使った軍事力か……これはエボーの軍隊がいてもおかしくないな。考えたくはないが人体実験などオハコだろ、人族なら。
考えているうちに川岸まで到着していた。
嘘だろ。ここまで馬走ったの? どうやって。と振り返ると次々と馬に乗ったエルフが到着する。よく見ると藪の中を、豹のように体をしならせ躍動している馬をみる。俺の知ってる馬じゃない……
そこから舟に乗るものと、乗馬したまま河に入る者もいて思わず
「クリスさん、あれあのまま行くんすか? 」
「ええ。流れほとんどありませんから」
「えっ、そうゆう問題……っすか」
大旅団は問題なく河を渡ると用意していた馬車を準備し、時間をかけずまた走り出す。その時は迅は、馬車にマーナと一緒にさせてもらう。
「ほかの国もですけど、レンカさん、チビッコら大丈夫ですかね」
「ええ。レンカが付いてますから、大丈夫ですよ。……迅さんあの攻撃。どうすればああなるのかわかりますか? 」
「なんとなくですけど。ちなみに魔法ではああゆう使い方は出来ないんですか? 確か魔人使ってましたよね。転移魔法でしたか」
「転移魔法は高度な魔法です。あの魔人ですら、広範囲に移動出来なかったでしょ? 国から国へなんて異常です」
「そうですか。その転移魔法のような能力があるみたいなんです。テレポーテーションって、前話したと思うんですけど。ただそれをどうやってるのかはわからないです。……魔法で言えば術者が現場にいるんですよね、こうゆう場合。でも里近辺にはいないって話ですし」
「それはいないですね。精霊も私たちも、悪意を感知できませんでした」
「悪意じゃなかったらどうなんです? 」
「どうゆうことです? 」
「例えば機械とか、自我のない操り人形とか」
「無理です」
「止めて下さい! 」
「迅さん? 」
「可能性あります。全軍で向かうのは危険です。戦力分けるべきです。今なら余裕で間に合う。そして戻ったら他国にも伝えるんです。砲弾近くに、機械か自我を持たない兵士がいるかもしれないことを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます