第14話  みえてきた目的地

 龍国王女ソラリスに送ってもらった街、サクラバでジンら一行は街並みを探索していた。

 空も夕暮れどきの色に差し掛かってきて時間的にご飯時だろうか、食べ物屋が立ち並ぶ通りに出ると、あちらこちらから匂いが立ち込めてきて食欲が出てくる。


 食べ物屋に入りたいところだが、宿を先に決めておきたいとのことで、目星のついた一つの店からお持ち帰りにしてもらい、宿泊するところでご飯にすることになった。


 旅など移動するには、食事を持っていくのが通例なのか、店頭でのお持ち帰りも当たり前のように行われた。

 宿はその食べ物屋通りの、裏通りにある、素泊まりの宿に決めた。今回も大部屋一つを借りる。


 この部屋も靴を脱いで入るので、迅にとっては居心地がいい。チビッコ達にも床で寝そべれるのは快適なはずだ。


 部屋に入り、丸になって座り込み食事を広げる。

 この世界の料理の凝りようは、元の世界と比較しても遜色ないほどだ。

 迅はメシを頬張りながらレンカに話しかける。因みに食事時に話をしたり音を立てるのは有りだ。


「幼馴染が王女様って凄いですね」


「うん。父が陛下と友達だったからね。城で剣とかいろいろ教えてたのよ。そんで同い年ってのもあって小っちゃい時からよく遊んでた」


「へえーっ。それでレンカさん、剣の達人なんですね」


「はっ。全然よ。しごかれたけどねー。ソラリスもあたしもヤンチャだったから。そんであたしは頑張ってソラリスと陛下、国を守るために騎士団の団長兼隊長までなったんよ。凄いでしょ。アハっ」


「……マジですっごいっす。それでたまに男みたいな口調になるんですね……いやっ、それはそれでそそります。ギャップで。ははっ」


「やー何言ってんの迅さん、乙女よあたし」


「ははっ。そうゆうことでいいですよ」


 賑やかに食事は進む。


 ◇


 食事も終わりほっと一息。迅は先日使った自分の能力チカラについて考えていた。


 自分の命の危険にともない発動することはわかった。では、それ以外ならどうだろうか。


 例えば、手足を失うとか。ただちに死に至らなくとも致命傷的なものだ。


 手足を斬り飛ばされれば、すぐ死に至らなくとも死ぬこともある。治癒魔法がどの程度まで作用するのかはわからないが。それを見越しての発動なのか、その場の命を救うためだけ発動するのか……


 それとあのチカラの副産物ともいえる、発動直前にスローモーションのように、周りの速い動きまでハッキリ視認できるということ。


 ただ、見えるだけで、そのスローモーションの世界を動けるわけでもない。もしかしたら今後活動できるかもしれないが、その他にも何かあるような気もする……その他諸々発動条件を把握しておく必要がある。



 それでマーナに確認してみる。


「治癒魔法って、どのくらいのことまで出来るんですか。万能ではないですよね。例えば体の欠損とか? 」


「もちろん、万能ではないですよ。極め方によりますが、極めたとしても、無くなった腕とかを生やすことはできません。ただ、例えば今の話で、切り離された腕を、体に繋ぎ止め、治すことはできます。私にも可能です」


「蘇生魔法とかは? 」


「ないですね」


 なるほどね。ひとしきり考えをまとめていた。


 


 ふと迅が部屋の奥に目をやると、なにやらチビッコ達がやっている……何してんだ。


 

 

 みるとラオが屈みこみ、キクリを肩車しようとしていて、ミクルが、後ろから支えている。

 肩にキクリを乗せたはいいが、屈んだまま立ち上がれないでいた。


「ふんっふんっふんっ」

「ラオっち、も少しだよー」

「がんば……」

「ふんっふんっふんっ」


 踏ん張ってはいるが、一向に立ち上がれそうもない。


「ラオっち。かたぐるまの向こう側にいくんにゃー」


 えらいの目撃しちゃったな……

 

「ふんっふんっふぎゃっ! 」


 とラオが奇声を発し、立ち上がると同時に、急に勢いよく立ち上がった反動で、キクリが後ろにのけ反り、後ろのミクルに頭突きをする形になった。


 そのままキクリとミクル、二人とも倒れこみ頭を押さえ、束の間泣き出す。

 迅は奇声のあたりから、危なっかしく感じ、側によっていた時だった。


「ほら。大丈夫か……」

「ごみん……」


 二人が泣き出すのをみてラオも泣きそうになっていた。

 迅はキクリとミクルの頭を撫で


「ほら。キクリ、ミクル。痛くない痛くない……ラオも泣くな。男だろ」


 とラオは迅に、股間を指でデコピンの要領で軽く弾かれ『ぐっ。へへっ』腕で涙を拭った。


 泣いている二人をみて、ホントに子供なんだな……と再認識しつつ、子供が痛がるのを見ると自分まで心が痛くなり、子供の魅力の一つなんだろうか。と様々な感情に包まれ


「目が離せないもんだな」


 と独り呟く。



 翌朝、マーナはミクルとラオを連れて、近くにある冒険者ギルドと役場に行き、情報交換をしに向かう。迅、レンカ、キクリは旅の出発の支度と、暫くの分の食料をお気に入りになった昨日のお店で調達していた。


 待ち合わせ場所にマーナ達が戻ってくる。ミクル、ラオの親御さん情報は得られず再び、アーマンナルト神聖国へと歩み始めた。

 それから迅ら一行は途中、村や街を立ち寄り、何日かかけて歩みを進めた。


 ある山の峠を下りるとき、見渡すと下方に広がる景色を見て驚き、合わせるようにマーナが話す



「着きましたね。神聖国の中心都市です」

「都市か? こりゃ、でかいな」


 大きな街と思っていたサクラバとは比較にならない程、大きい盆地に全体に隙間なく街が展開してるようだ。


「それで、あれなんです? 」


 遠目でもわかる巨大な建造物らしきもの。レンカが気づいたように話す


「あれだよ。迅さんに見せたかったの」

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