第12話
宿へ着いた。
だが、ヨシはみんなの中に入ろうとはしなかった。
むしろ、みんなが無事に宿の中に入ると、ひとりミュウを連れて出ていこうとした。
だが、その事にいち早く気付いたケンは・・・、
「ヨシさん、待って!」
と、袖を掴む。
「ダメだよ、まだ動いちゃ。」
「・・・・世話になったな。大した怪我ではない」
「でも・・・」
「・・・・」
「それならさ、名前くらい教えてよ。それなら文句ないよね?また、会うかもしれないし・・・」
「いや、覚えなくていい」
「僕の名前は【ケン】。さっきの闘いには、参加しなかったけどね!
ねぇ?あなたは?」
「・・・・【ヨシ】だ。別に覚えなくていいよ。また会うなんてないだろ?」
「【ヨシ】さんね!覚えとくよ!きっとまた会う気がする!僕の勘は当たるからそこを覚えておいてね」
「なぜ、そう思う。また、会うなんて・・・・」
ヨシは何故かレイナが言った言葉を思い出していた。
「覚えていてあげる。きっとまた会う気がするから」
と。
健は、なぜ同じことを言うのだ。
すると、
「みんなが言ってるからかな。《あなたが僕たちと旅をする仲間になる》って。あっ、それとさっきの女王様と言ったあの女の人は、ヨシさんの大切な人なの?」
「レイナにあったのか?」
「(顔が変わった。)さぁ、直接は会ってないし。姿は見たよ?でも、ここへ来る前に帰っていってしまったから」
「そうか・・・。お礼、言えなかったな」
と、小さくつぶやくヨシさん。
「えっ?」
「いや、なんでもない。家に帰る。
じゃあ・・・・」
そねあとヨシさんの悲しそうな瞳を、ケンは忘れることが出来なかった。
同じ頃1人で戦い、傷ついた戦士様からある事実を聞いてみたくてゴウは口を開いた。
「あの、失礼なことを聞くかもしれませんが、あなたは・・・タネヨシ様あなたは、彼の・・・ヨシって人の父親では?」
ヒロが、自分が聞こうとしたことをゴウに聞かれ、目を見開いたが、黙っていることにした。
「・・・・・・・」
しばらく沈黙があった。
ヨシが宿から出ていってしまったことはケン以外誰も気付いていないようだ。
「・・・もういいのだ。私も彼を見てすぐにはわからなかった。あの女性が、その名を言うまで・・・」
「ヨシ!」
確かにあの人は、そう言っていた。
「でも、貴方様は、ヨシさんが連れていた動物の名を知っていた。それは何故ですか。」
「確かめたかった。あれは幼い頃、わたしが彼に育てるように言ったペットだった。迷い込んでいたのを、彼が連れてきたからよく覚えている」
「あなたは名を名乗るべきですよ。親子なんですから」
ヒロはそう言った。だが・・・・
「彼はきっと、私を恨んでいるだろう。なにせ彼と、妻と弟を置いて旅に出たのだからね」
「だけどあなたはたった1人で闘っておられます。かつては我々のように、仲間はいたんですよね?私たちのように」
「あぁ、君たちのように5人の仲間がいた」
「5人・・・」
「君たちは、私たちのようの生まれ変わり。そう言って使命を受け継いで来たのではないか?」
「はい、そのとおりです。それぞれの力も、自分たちの親から引き継がれたもの。そして、この剣も・・・」
「まだ、仲間は5人なんだな」
「最後の一人は多分・・・・」
ヒロは、ヨシさんが眠っていると思われる部屋に視線を向けた。
「タネヨシ様が、ヨシさんの?まさか・・・」
ケンは、外でその話を聞いていた。
「つまり、最後の一人は【ヨシ】って人なわけだろ?」
と、ケンの隣に来たのは・・・
「あれ?ゴウ・・・さん。どうして」
「俺はとっくに気づいていたぜ?ヨシって人がこっから出ていったの」
「えっ?嘘だ」
「俺の力をなめるなよ?」
「ヨシさんは、もうこの宿に居ないのですね」
部屋から出てきたヒロさん。
「あぁ、もうとっくにいないぜ?なっ?」
「うん、なんか気づかれたくないみたいだったから止めなかったんだけど・・・・」
「そうでしたか・・・」
「彼って、人を嫌っているのかな?何も言わずにいなくなるなんて」
「あいつ、操られている時に俺に言ったんだよ。家族を殺したのはお前かって。ビックリしたぜ。あんな顔するなんて。よっぽど、怖い目にあったんだな」
「家族を殺した?」
タネヨシ様は何故か立ち上がる。
「きっと、ヨシさんの家族は目の前で誰かに殺されたんだよ。僕の母親のように・・・」
と、ケンは言う。
「みんな、家族は?元気でいらっしゃるのか?」
「僕は、兄さんの村に迷い込んだんだ。だから、両親がいるのか居ないのかわからない」
と、ジュンは話し出した。
「元気でいてくれることを願う」
「君は、彼と兄弟じゃないのか?」
「はい、そうなんです。でも、兄さんは・・・ぼくをここまで強くしてくれた。人の温かさに触れられたのはきっと、兄さんのおかげだと思っています」
「そうか」
「褒めるなよ。照れるだろ?」
「旅に出ようと思ったのは?」
「・・・・実は、兄さんの家族が・・・。だから、2人きりです」
「そうか、辛かったな」
「なぁ?それよりヨシって人を追いかけた方がいいんじゃないのか?今ならまだ、そう遠くへは行ってないはず」
「いいのだ。彼が人嫌いになったのはきっと私のせいだろう。」
きっと傷ついているのだ。
その言葉に、みな黙ってしまった。
そして傷を癒し、次の旅を始めようとしていた。
宿を出ようとしている6人。
「タネヨシ様、本当に私たちとは旅を共にしないのですか?」
「君たちは、君たちなりの旅をした方がいい」
「また、会えますよね?」
「あぁ、きっと会えるだろう。きみたちも、残り1人を見つけられるように祈っているよ」
「あのヨシって人なのは、確かなんだけどね」
「兄さん・・・」
「タネヨシ様、ご健闘を祈ります」
「あぁ、きみたちもどうかご無事で。また、会おう」
そして、一礼すると、5人と1人は分かれて旅に出た。
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