第15話 真、写真に話しかける
若い。
ふたりを見ていると、それがよくわかる。
かつては、私もそうだったように。
生きることに飽きてくると、彼らが眩しく見えるのだ。
何かに打ち込める熱意は、年齢とともに薄くなっていった。
おっと、ふたりは私の言葉を待っているようだ。
そんなものは認められない、と感情をぶつけるのは簡単だ。だが、それで良いのだろうか。
今日、初めて会った彼の人となりはまだわからないが、少なくとも今は、娘を見捨てはしまい。
親に殴られて、そして怒られにうちに来たわけだ。逃げたかったろうなぁ。
私が学生の頃、これができたろうか。
無理だったろうなぁ。
私は、仏壇の妻の写真に顔を向けた。
孫の顔を見ることは叶わなかった、叶えてあげられなかった。
子は、授かりものだ。望んでも迎え入れられない環境だって、ある。
「なかなか子供に恵まれなくってねぇ。授かるまでに、苦労したんだ」
私の口から、ぽろりぽろり、言葉が零れていく。
着ずれの音。ふたりが居住まいを正したのがわかる。
「運よく授かって、嬉しかったのを覚えているよ」
妊娠検査薬で反応が出た時の妻の顔は、忘れられない。
「ま、その後が大変だったな」
はは、と苦笑いだ。
当然だが、お互い子育てなんて初めてで。ふたりとも親元を離れていて、寄る辺もなかった。
「今ほど情報もなく、知り合いに話を聞いてはいろいろ試したもんだったなぁ」
辛さもあったが、同じかそれ以上、楽しかったな。
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