Lost Body ―ありふれた英雄譚―

明日明後日

『創世記』より

『始まりは無であった。そこに神と邪龍が生まれた。


 神は善の心の元、まず虚無の中に「空間」を作った。これがこの世界“エデンヴェルト”である。そして「空間」の中に流れを生み出した。それが「時間」である。


 邪龍は悪の心を持ち、自らの血肉を分け与えた五柱の獣を生み出した。


 神はその空間の流れに沿って様々な生き物を生み出した。エルフ族、人間族、ドワーフ族、そして多くの魔獣を生み出し、これ以降も創生は続けられた。神は、その中でも知恵のあった人間と、寿命の長いエルフに、火、水、風、地の四つの魔法を授け、魔法によって世界の繁栄を願った。


 邪龍は神の作った魔法を嫌った。それに対抗して、人間をそそのかして四つの魔眼を与えた。その後魔眼は魔法と同じく人間の手によって繁栄していった。


 魔法と魔眼の二つが繁栄することで、神と邪龍の対立構造はより深くなっていった。そしてとうとう邪龍が神に反旗を翻した。かの有名な「神代決戦」の始まりである。


 神と四人の魔法使い、邪龍と四人の魔眼の騎士による戦いは熾烈を極めた。結果、見事神は邪龍を打倒した。ただ、神と邪龍の力は拮抗しており、邪龍を完全に滅ぼすことはできなかった。主を失った魔眼の騎士は、神への忠誠を誓った。忠誠の証として、彼らは神に魔眼を差し出した。そこで神は四つの魔眼を用いて天の鎖を創り、鎖で邪龍を地の底に封印した。


 こうしてエデンヴェルトに平和が訪れ、世界は魔法と魔眼によって繁栄をつづけた。


 しかし神は邪龍との戦で負った傷が災いして、ひどく衰弱していたため、休息に入ることにした。


 そして神は「始……と…わりは……は同………ある。我こ……祖……あり、……が破……る。剪……てに、我が………在ら……と…う。」という言葉を残した。 』




 禁書目録『創世記』第一章「世界の成り立ち」より(原文ママ)(一部欠損)

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