第13話 命の炎、舞い降る雪

「…何か…嫌な…空気…」


あかりさんは言った。



「……………」


「…立入り禁止の札……下がってるし…」


と、連れの男の人。




「…結構…ここ……ヤベーな…」


と、悠愼。



「えっ!?あの…分かるんですか?」


と、男の人。



「…分からないなら霊媒師の意味ねぇだろう?何の為にここに来たんだ?」


「…そ、そうですよね……」


「…悪い…俺、口悪くってさぁ~霊と喧嘩する勢いで、いっつも闘ってて。言葉キツイんだよなぁ~。ありがとう……二人共。ここからは俺と今、俺の中に一緒にいる彼女と行くから暗くならないうちに戻りな」


「あのっ!俺達残ります!」


「えっ!?」


「駄目ですか?」


「気持ちはありがたいけど…危険過ぎる」


「じゃあ…何か手伝う事ないですか?」


「………………」


「じゃあ紙と書くものあるか?」



悠愼は、そう言うと書き出す。



「そこに連絡して欲しい。俺の住んでる所の連絡先だ。準備しておいてほしい。そう伝えれば分かると思うから」


「分かりました」



私達は二人を見届け、立入り禁止の札を潜った。



「生きて帰れるか分かんねーけどな…」


『悠愼…』


「どうした?」


『…ごめん…』


「えっ?…もしかして気にしてんのか?」


『えっ?』


「今、気持ちは隠しても分かる」


『そっか…悠愼…私助かる?』


「助かるじゃなくて俺が助ける」


『だけど助からなかったら』


「好きな女だから。好きな女を護る為、俺が必ず助けるから」


『悠愼…うん…。悠愼…私…』


『俺も同じ気持ちだから…必ずみんなの所に戻ろう…』


『うん……』





ありがとう


私達は相思相愛だと感じた瞬間だった


嬉しいけど……


私達は結ばれない



だって


友夏がいるから……


友夏の想いがある限り


私達は……






それに、あの日、海での事件

彼女から忠告された事がある。


本体と魂が離れた事があると、その回数が増え、霊に狙われやすくなると……


元々憑かれ易い体質の身体なら、尚更、質が悪い。


それだけじゃない


その状態が続くと霊界や霊界の使いの者に目をつけられると……


下手すれば死ぬ事になると言われた。


だけど、私は元々憑かれ易い体質だった為、死ぬ事があるのは覚悟していた。


だから躊躇いはなかった。


そして、今、こうして存在しているのは悠愼がいてくれたから。






でも……


この闘いが終わるとき


私の人生は決まる


生死の運命が……





【キミ…ハ…ダレ?】


【オネエチャンモ……イッショ…ダ……】


【……シンデ…ナカッタ…ンダ……ザンネン】



「残念だと?ふざけんなっ!悠季まで巻き込みやがって!悠季は連れて帰るんだよ!」




【ムリダヨ…オネエチャンハ…タスカラナイ】


【オネエチャンハネ…ボクト…ミンナノ…ナカマニ…ナッタカラ…】



「仲間だと?悠季は俺達の仲間なんだよ!大事な友達なんだよ!お前と…いや…お前らと一緒にすんじゃねぇぇっ!」



【クスクス…】


【ネエ…オニイチャン…。オニイチャン…モ…ナカマニ…ナロウヨ】



「俺はなんねーぞ!俺は悠季を連れて帰るだけだ!」




【ダ~~カ~~ラ~~……ム~~リ~~】



「勝手な事、言ってんじゃねぇぞ!クソ子供(ガキ)!お前らの遊びに付き合ってる暇はねぇんだよ!」


【ウル…サイ…】



それと同時に悠愼は、吹き飛ばされた。



「…っ!」


『悠愼っ!』


『俺から出るな!俺の中にそのまま入ってろっ!』


『悠愼…』


『俺はお前を助ける…その為に来てんだ。だから俺から離れんな…悠季』


『でも……』



【オニイチャン…モ…イッショニ…ツレテ…イッテ…アゲルネ…キャハハ…】



不気味な甲高い子供の笑い声が響き渡る。



【ソウスレバ…オネエチャント…イツモ…ズット…イッショニ…イラレ…ルヨ…オニイーチャン…クスクス…】



悠愼は手も足も出ない状態だった。


子供は自分の体でありながら、周りの霊によって力が倍増していた。




ここは隔離されていた森の山奥の病院。


当時、伝染病の疫病が流行っていたのもあり誰も近づく事がなかった。


と、言うより近付けなかったという言い方が正しいだろうか?


子供の両親がここの病院で亡くなったのも事実。


子供は、近付いてはいけないと言われていたけど両親に会いたい一心で施設を、こっそりと夜に抜け出した。


しかし、向かう途中、交通事故に巻き込まれ還らぬ人となり、ここの病院の森に遺棄された。


その後、何者かによって火災が発生。


噂では、ここに子供を運んで来た人が証拠隠滅の為に遺体を燃やしたのではないかと……


消防車も山奥で、すぐに出動できる訳ではなく、その火事によって沢山の尊い命が亡くなった場所だ。


怨念や哀しみ等、様々な思いが詰まっていた。





そんな中、高校生と小学生のバトルだ。




「………………」



「悠季…?」



悠季は何かを感じたのか、俺の中から消え離れた。



「悠季…?悠季っ!戻れーーっ!悠季ぃぃぃっ!」




【…オニイチャン……ノ……マケ……】


【オニイチャン…モ…ラクニ…ナロウ】




―――×―――×―――×―――×―――×



「あかりさんっ!」


「あかりっ!」


道端に倒れているあかりさんの姿が見えた。



「あれ…?私……」



幽体離脱をしたと思われるあかりさんの姿。



「あかりさん?戻ってっ!大事な人が待ってるから…!」



「あかりっ!あかりっ!おいっ!」



その時、二人の元に向かう何かが視界を過った、



「あかりさんっ!お願い戻って!」



そして私は二人の元に向かい、立ち塞がった。




「二人の邪魔はさせない!」




次の瞬間、私は吹き飛ばされた。



「きゃあっ!」



「悠季さんっ!悠愼の所へ」



背後から声がした。



「えっ?」

「ここは私に任せなさい!」

「…悠愼の…お父さん?」

「さあ、早く!」

「はい…!」



私は悠愼の元に向かった。


戻った矢先、私は目を疑った。


悠愼が倒れている姿。



『悠愼…悠愼っ!ねぇっ!』


「悠季…?…良かった…」



私の片頬に触れる。


ドキン……



『悠愼…』


「バカ……泣くなよ…」

「だって…」




【……オニイ…チャン……シツコイ…ハヤク…シンデ…ヨ】



「俺はまだ死なない……死ぬわけには……いかねぇんだよ……」



【ソウ…ナン…ダ…】


【ジャア…コレニ…タエレルカナ…?】



「えっ?」



その時、私の身体が魂と一緒になった。



「悠…季…?」


「私……戻って…」



それも束の間。



【クスクス…フタリ…マトメテ…コロシテ…アゲルネ…】


【バイバイ…オニイチャン……オネエチャン】


【キャハハ…ゲームオーバー…ダヨ…】




「「えっ?」」



私達、同時の声。



「悠季っ!」

「悠愼っ!」



私達に向かって白い光が向かって来た。


私達は抱きしめ合った。





空から粉雪のようなキラキラとした白い光が舞い落ちる。




「パパーー、見てーーっ!雪降ってるよーー」

「雪?この時期に雪はおかしいぞ……おや?本当だ…」




―――×―――×―――×――×



「…雪…?」と、伊都霞。

「…雪…?この時期の雪はおかしいから」


と、正矢。




―――×―――×―――×―――×



「…これは……何?……雪…?…光?」と、功太



―――×―――×―――×―――×―――×


「雪…?…でも……キラキラしてる……」


と、友夏。



―――×―――×―――×―――×



「これは……?……悠愼…悠季さん……。二人の……命の炎が……消えて…いる……?」















































































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