第7話 大事な仲間
それから数か月が過ぎ、功太君は私とトコトン付き合ってくれた。
会う日は必ず家に来てくれて、とても良くしてる功太君だった。
私は功太君の一生懸命さに心打たれ恋人として付き合う事にした。
一方、友夏も悠愼に告白をしゆっくりと付き合う事になった事を聞いた。
「ねえ、功太君、今度のデート外に出ない?」
「えっ?」
「何かいつも来て貰っているのが申し訳なくて」
「駄目だよ!」
「功太君」
「何かあった時、助けられないから!悠季ちゃんの気持ちは嬉しいよ。だけど、外出は控えよう!悠季ちゃん」
「……分かった…」
ある日の事。
「悠愼、ちょっと相談があるんだけど」
「何だよ、功太。改まって」
「悠季ちゃんと俺付き合ってんだけど…彼女が外出しようって…俺……駄目だって言っちゃって」
「………………」
「何かあったら俺、何も出来ないし……」
「……なぁ、功太。悠季が外出したいって言ったなら応えてやれば?出かけた日、家に寄ってもらえば良いわけだし」
「悠愼…」
「俺も友夏ちゃんとゆっくり付き合ってるけど、連絡さえして貰えば助けてやれない訳じゃねーし。悠季の事は友夏ちゃんも分かってくれると思うけど」
「友夏ちゃんは、悠季ちゃんが霊に憑かれ易い体質って事は知らないのに?」
「そうだとしても、俺、伝えているし。悠季に何かあった時は、そっちを優先にするけどって…。まあ、友夏ちゃんは良い気しないかもしれないけど…友夏ちゃんは、納得してくれてるし」
「…そっか…」
「学校の行き来だけじゃアイツもきついだろうし、辛いだろう?出かけたいって言ったら外出してやりな。帰り家に寄れそうにないなら報告さえして貰えば良いから」
「分かった。ありがとう!悠愼っ!」
功太は去った。
「…本当…アイツが普通の人間なら良かったんだけどな……アイツが何したって言うんだろうな……霊に憑かれ易いって……神様も意地悪だよな……」
そして、ある日の休日。
私と功太君は、外に出かける事にした。
その日の夜 ――――
「悠季?こんな時間に何処行くの?悠季?悠季待ち…」
「……呼んでるの……」
「えっ?」
「友達が…呼んでる……」
「……悠季……?友達って……?もう遅いから辞め……待ちなさいっ!悠季っ!」
私は外出をした。
誰かに引っ張られるように……
「あの子……まさか…」
それからしばらくして。
「あのっ!夜分遅くにすみませんっ!」
「功太君」
「悠季さん、いらっしゃいますか?何度も連絡したんですけど繋がらなくて気になって…」
「それが…あの子……友達が呼んでるとか言って外出して…まだ戻ってなくて…様子がおかしかったし…」
「えっ?どれ位経ちますか?」
「時間は見てないけど…でも…一時間位経ってるかしら…」
「一時間…!?」
「警察に連絡した所で、取り合ってくれないだろうからどうする事も出来なくて…」
「俺、探して来ます!」
「だけど功太君、霊の仕業なら…」
「大丈夫です!必ず連れて帰ります!」
「功太君っ!お願い!あの子を必ず…」
「はいっ!」
そして、向かった先は ―――――
「悠愼っ!悠愼っ!悠愼っ!開け…」
「あー、何だよ!こんな時間にうるせー…」
ガシッと両腕を掴む功太。
「うわっ!何だよ!」
「悠季が…悠季がっ!」
「悠季が何だよ!」
「連絡つかなくて!家にもいなくて!今、探しに行こうとしても予想がつかなくて」
「付き合ってんだろ!? だったら予想とか……」
「…無…理なんだよ…。俺じゃ駄目なんだよ!」
「……功太……?」
「俺…悠季が好きだけど……奴等には…霊にだけは…悠愼じゃなきゃ駄目なんだよ……!」
「えっ…?」
「友達が呼んでるって外出したっきり戻ってないって…様子もおかしかったって……」
「……待てよ…だって出かけてここに寄って帰って……何の異常もなかったし……」
「悠愼……それは階級の高い霊だろうな……」
「えっ?……親父……」
「勘の鋭い相手(れい)だ。ここに来る前、もしくは来るって分かっていて自分の居場所に移動した霊だろうな……」
「えっ?……つまりそれって……悠季から離れて逃げたという事か……」
「そうだ!」
「……マジかよ……ふざけやがって……」
「急げ!悠愼っ!今日の相手は手強いかもしれんぞ!俺も後で駆け付けよう!」
「分かった……功太っ!今日のデートコースを言えっ!記憶を辿れっ!アイツが…悠季の様子がおかしい時なかったか?」
「………………」
「そういえば……いきなり海に行きたいって……崖目掛けてて……帰る時もずっと……崖の方を見つめて……」
「何処だ?何処の海だよ」
二人は向かうのだった。
一方。
「悠季…?パパちょっと止めて!」
「どうした?友夏」
「良いから車を止めてっ!」
私の姿を見掛けた友夏は、私の元に来る。
「悠季っ!何してるの?」
振り返る私。
「…誰?」
「誰って…私は友達の友夏だよ」
「…友…夏…?あー、彼女の友達ね。あの子なら、もうここにはいないわよ」
「えっ?」
「生死をさ迷ってる所かしら?もしくは…もう天国に逝ってしまったかも?…フフフ……」
「何言って……悠季を返してっ!ねぇっ!」
「無理ね!」
「…えっ…!?」
「彼女はいないもの。魂が入れ替わってるから。まあ、入れ替わったというよりも…あの子の魂はないわよ」
「私の親友を返してよっ!」
「クスクス…親友ねぇ~……悪いけどあの子は私の親友よ!要約、私のチャンスが来たわ」
「違うっ!悠季は私の親友よっ!あなたの親友なんかじゃないっ!」
「いいえ。あの子は裏切り者の親友。私が欲しいものは全て彼女にあの子に奪われたわっ!」
「悠季は悠季よっ!悠季を返してっ!」
「じゃあ!あなたの親友なら、二人仲良く生死をさ迷えばいいわ」
「辞めろ!」
「チッ!邪魔者が……!」
「これ以上犠牲者を出すんじゃねぇよっ!」
「……悠……愼……君…」
「功太、友夏ちゃんを頼む…親父の側から離れるんじゃねぇぞ!友夏ちゃん…必ずアイツを連れ戻すから」
「悠愼…君…うん……」
二人には霊が近付けないよう結界を親父に張って貰いそこから出ないようにする。
友夏ちゃんの父親も入って貰い、みんなが見守る中、俺達は闘う事にした。
「さて……悠季を返してもらおうじゃねーか」
「さっきから、悠季、悠季って…そんなに彼女が大事?だったら連れ戻したら?」
「言われなくても連れ戻す!いや……彼女の魂を返してもらう!お前は地獄に落としてやる!」
「クスクス…だったらやってみなさい!」
ブワッと強い風が吹き、吹き飛ばされた。
「…っ!」
「彼女が目覚めない限りあなたは不利ね。無駄よ」
「そんなの……分かんねーだろ!」
「死ぬ気で闘わなきゃあなたも命を落とす事になりかねないわよ。私の仲間が沢山いるから」
「そうだろうなっ!上等じゃねーか。テメーが巻き込んだ仲間がウヨウヨいるんだろうしな?でも悠季は連れ戻す!」
―――×―――×―――×―――×
「悠季さん……起きて……あなたはまだ霊界に来ては駄目よ…」
≪誰…?≫
「あなたは……誰…?」
「私は彼女の魂。私は…ここで自ら身を投げ命を落としたの……」
「…えっ…?」
「親友に好きな人を奪われてしまって……彼氏からも裏切られた……」
「あなたには沢山の仲間がいるわ……ここで悪霊化した私に負けたら駄目よ……あなたならきっと助かる!彼一人じゃ私に太刀打ち出来ないわ……彼も死ぬかもしれない」
「えっ!?」
「霊界から迎えに来る前に自分の体を取り戻して!」
「でも…どうすれば…」
「彼の身体を借りて二人で闘うのよ…」
―――×―――×――――×―――×
≪この男…どうしてこんなにしてまで彼女を助ける!≫
「チッ!」
≪彼女の命も頂こうかしら?≫
「ねぇ…功太君…」
「何?」
「悠季…助かるかな?」
「えっ?友夏ちゃん?」
「どうして悠季ばかりなのかな?」
「それは…」
「出来れば変わってやりたいよ…悠季は…何もしていないのに…どうして…?…私…」
友夏は結界から飛び出した。
「友夏ちゃんっ!」と、功太。
「友夏さんっ!戻りなさいっ!」
「悠季ーーーっ!」
俺の前から悠季の身体を借りた奴が消えた。
「友夏さん戻りなさいっ!」
「友夏ちゃんっ!」と、功太も飛び出す。
「二人とも戻りなさいっ!霊(やつ)に身体が乗っ取られるぞ!」
「えっ!?」
次の瞬間 ――――
功太は吹き飛ばされ、悠季の姿をした霊は友夏を掴む。
「きゃああっ!」
「辞めてーーっ!」
「…お前…何故…」
「友夏は渡さないっ!」
「悠季…?」
「悠季ちゃん?」
「悠季…さん…?」
「友夏は私の大事な友達よ!親友なのっ!みんなを巻き込むのは辞めてっ!」
「悠季…」
「悠季ちゃん…」
「友夏、戻って!」
「悠季…でも…」
「私は大丈夫だから…ねっ!必ず戻って来るから…」
「おのれーーっ!邪魔をするなぁぁーーっ!」
「きゃああっ!」
私は吹き飛ばされた。
―――×―――×―――×―――×
「私が本気の怒りになった時、私の本体が姿を現し、仲間を呼ぶ瞬間があるわ!その瞬間(とき)彼の身体を借りて二人で私事、躊躇う事なく倒して!」
―――×―――×――――×
私は彼女の言葉を信じた。
だけどどうやって?
私から悠愼に伝えるの?
「悠季」
ドキッ
「悠愼…」
「俺の中に入れ!」
「えっ?」
「二人で倒す!」
「でも…」
「お前の身体はお前の力で戻せよ!俺の力を借りろ!俺だけの力じゃ無理だ!お前、死ぬ気か?このままで良いのかよ!俺が必ず、お前の身体を戻すから!俺に協力しろ!悠季」
「本当に……助かるの?戻れるの?」
「悠季っ!」
「私…このまま死んだ方が…」
「悠季っ!功太や友夏ちゃんが待ってんだぞ!俺もお前に関わっているみんなも待ってるから!ここで死ぬなっ!」
悠愼は私の片頬に触れるとキスをした。
ドキン……
「……悠愼…」
「お前だけが頼りだから…悠季…俺を信じろ!」
ドキン……
「…うん……」
「お前にしか見えない入り口があるから、そこから俺に入れ!良いな!」
私は悠愼の中に入る事にした。
気付けば闘いは終わっていた。
目を覚ました時は、自分の部屋にいた。
友夏と功太君に片方ずつ手を握りしめられて――
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