Creepy cute creatures 〜変な目玉に寄生されたので、みんな仲間にしてしまおう〜
エテンジオール
序章 始まり
プロローグ
夕焼けよりも明るい夜の街に、真っ黒な雲がかかる。蛍の群れが飛び交うように舞う光のつぶは幻想的で美しく、それが落ちたところにある木に、落ち葉に、家に、広がろうとして消えていく。
窓ガラスの割れる音、プラスチックの焼ける匂い。煌々と轟々と光を放ちながら燃え続ける誰かの家。それに照らされて、真っ赤になった目の前の道に、近くの家の屋根に、部屋の中に浮かび上がるのは夥しい数の真っ黒な瞳。瞳。瞳。
まん丸に磨き上げられた黒曜石の玉のように無機質なたくさんの瞳は、無造作に散らばりながらいたるところで無感動に火事の光景を映し続けている。
燃え続ける一つの民家。当然、何の要因もないのに突然火が付くはずもなく、火種になり得るだけの何かがそこにはあったはずで。実際に今回の火事の原因でもあった、"放火"の被害者である年の若い少女と、その両親であろう成人した二人が、燃え盛るこじんまりとした一軒家から新鮮な酸素と環境的に安全な場所を求めてかけ出てくる。
ドアをバタンバタンと開けながら、ドタドタと音を立てながら階段を駆け下りながら。
それはきっと、"少し前"までであれば正しいことだったのだろう。少し前までの、まだ人が世界を支配していた、安全な時代であれば正しかったのだろう。
では、人間が時代の支配者から強引に引きずりおろされた、人の天下が終わりを告げた後の世界においては何を示すものだったのか。
"ソレ"は、玄関を蹴破って出てきた平凡な家族の前に姿を現した。
真っ黒な瞳に過ぎなかったそれらは、家族たちの足音を、その上がった息を、どこにも見えない耳で聞き分けて“動き出す”。
そこら辺中に散らばっていた大量の肉塊がうぞうぞと起き上がり、体中に浮かべたくりくりしたかわいらしい瞳を一斉に三人の家族に向け、のったのったとにじり寄っていく。
ボタボタ歩きながら寄っていく瞳の怪物たち。
しかし彼女は静かになったものの、一度
人の域を逸脱した者たちが多数集まって、一人の少女とその両親に襲い掛かる。燃え盛る少女らの家の、真っ赤に照らされた道路の上で。
嫌に明るい真夜中の住宅街に、すでに少なくなった人々の、また少し人数の減る悲痛な叫び声が響き、少しの時間をおいて、再び静寂に包まれた。
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