このスケベンキっ!~下の世話をしたがる彼女の更生ライフ~

奈名瀬

第1話 うちのトイレが美少女になりました!

『数日前から全国で一斉に「家具や家電製品が少女になった」という異常現象が起きているようですが――』


 テレビを消し、バスタオル一枚羽織っただけの少女に向き直った途端……頭痛がした。


「幸い……この異常事態を経験しているのは俺だけじゃないらしい」

「あら。良かったじゃない」


 だが、だがだ――


 陶器みたいな白い肌。

 硝子ガラスで紡いだような美しい白銀の髪。

 宝石と見紛う程に澄んだ青い瞳。


 ――目前の美少女を見て、自分が一番貧乏くじだと確信する。


 その理由とは、


「それで? いつおしっこ飲ませてくれるの?」


 彼女が元々……トイレの便器だったからだ。


「頭が痛い」

「やだ大丈夫? 風邪なんじゃないの。吐きたくなったらいつでも言って。私が受け止めてあげるから」


 嬉々として「あーん」と口を開ける彼女に、俺はなんと言ってやればいいんだ?


「とりあえず服を着てくれ」


 恥じる様子もない彼女に男物の服を差し出した。

 すると、


「えぇ……これって何の意味があるの?」


 元便器である少女に『服』の有用性はわからない。

 だからって裸のままでいられては困る。

 心底嫌そうな顔をする彼女になんと言えばいいか思案し、


「あのな?」

「なによ?」


これは、お前達にとっての便座カバーだ」

「……わかった、着るわ!」


 何故か説得に成功した。


「ちょ……ねぇ、これどうやるの? 助けてっ」


 いそいそと服の穴に手を突っ込んで絡まっていく様子に頭痛が酷くなる。


「とりあえず……今日はトイレどうすっかなぁ」


 今朝までトイレがあった空間を見て……深い溜息が漏れた。

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