非科学的シュプレヒコールのススメ

亞屍(あかばね)

世界編 #01 プロローグ

 Vというしょうねんは、ひさしぶりのおおあめかさはなかせてあるいていた。かれかくてきたかく、かせたはなちょっけいは160cmとおおきかったので、そのよるたきのようなあめようしのげていた。

 しょうねんまちあるいていると、

「そこのおにいさん。」

 くぐもったこえみみはいった。いんしょくてんのキャッチかとおもせんだけをこえぬしほうけると、はんめんぼうどくガスマスクをつけたじんぶつかれほうををじっと見ていた。

かされてもらえません⋯⋯? このあめなのに、ってきてなくて――。」

 いっぱんて、ガスマスクをまちそうちゃくしているのはみょうであるが、しょうねんにはまいとしやまい流行はやりやすいこのに、みずからの身体からだきんばいかいさせたくないというがいうつったのだった。

「どうぞ。」

「ありがとうございます、たすかります!」

 ガスマスクのじんぶつれいをし、オーニングからしょうねんかさどうする。しょうねんより25cmほどひくしんちょうのガスマスクのじんぶつはラフなくろふくていて、そのもあってか、かたまでびたダークブロンドのかみやみくようににぶかがやきをびていた。くびにかけたペンダントがくらあかひかる。

「このへんんでるんですか?」

んでるというか――まぁ、そんなかんじです、このみちをまっすぐったところに。」

 ガスマスクのじんぶつゆびしたみちくと、ちょうどしょうねんいえもそちらにあるのだ。

ければおくりましょうか。ぼくもこのみちなんです。」

「ホントですか! ――すみません、ありがとうございます。」

 よるあめはなびらたるおとは、だいつよくなっていく。しょうねんとガスマスクのじんぶつ調ちょうそろえてあるいた。かれいえはかなりさきにあったのでもどしんぱいはしていなかったが、ながいことまっすぐ、まっすぐとくぐもったこえつづく。

 とうとうしょうねんのマンションのまえとき、ガスマスクもまたあしめた。

「ここです! ここの302ごうしつなんです。」

 しょうねんひどおどろいた。かれは303ごうしつで、ガスマスクのじんぶつしつといったとなりなのだ。3かいまでエレベーターでのぼると、たしかに302ごうしつのドアのよこにはじゅうこうかんあるフォントで“D”のがあった。そういえば、なんねんまえしてきたときなんたずねても302ごうしつだったな、とおもしょうねん

「おとなりさんだとはおもいませんでした、けんせまいですね。あっ、わたし、D-cpx55(+)といいます。」

 ガスマスクをかるいちれいするしょうじょD。ガスマスクをそうちゃくしていたときとはちがい、あんしつのラバランプのようなとうめいこえをしていた。

「V-sfp32です。――プラスちのひとってほんとうにいるんですね、はじめていましたよ。」

「ふふ、よくわれます。」

 さきほどまでガスマスクでかくれていたかおがおになると、しょうねんしょうあんかんおぼえた。

「あ⋯⋯かさ、ありがとうございました。」

「いえいえ。」

 しょうねんかくてきじんみゃくせまく、ゆうじんがいはなかいまれであった。ましてやしょたいめんせいともなれば、かいつたなくなってしまうのはひつぜんであろう。

 しょうじょもまた、してかおせまいというわけでもはなかったが、しょうねんのようなにんげんとはかかわったけいけんがなかったため、どうせっするべきかさぐさぐりではなしをしているのだ。

「あ、じゃあまた明日あした――。」

「はい。おやすみなさい。」

 かれらのかいにはかんというあなすういていたが、ふたがそれにくことはなかった。しょうじょがドアをしずかにめると、しょうねんみみにはんだあまぐもきゅうおんだけがこえていた。

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