第4話:とっても長いプロローグその4
あの変な夢から一月ほど経った。あれから変な夢も見ることはなく、仕事に忙しい毎日を過ごしていた。
今日は日曜日で久しぶりの休日を楽しむことにした。
ガネメモを久しぶりにプレイしたかったがソフトとOS950搭載のノーパがないので、動画サイトにアップされているガネメモRTAの動画と攻略WIKIを見てプレイしている気分を味わっていた。
ちなみに動画のアップ主とWIKI管理人は俺である。
動画の再正数は50、WIKI閲覧数も200くらいである。 その数はほとんど自分であるのは考えないことにしている。
「明日からまた仕事か……」
正直ため息が出るほど憂鬱になる。それでも食って行く為には仕事をしないといけないし、安月給だけど一応大手で正社員で仕事を出来るだけ、自分はまだ恵まれていると言い聞かせる。
確かこの心境は、シイラカンス頭のキャラ名の症候群だったかな。18時30分はとっくに過ぎているけどね。
時刻はそろそろ就寝の時刻になっていた。
明日も良いパフォーマンスで仕事をすべく就寝の準備をする。
「さて寝るか」
おそらく就寝し、夢を見ているのだろう。
周辺は以前見たような、白い空間になっており目の前には巨大とも言える白い蛇が鎮座していた。
だが、俺はその蛇が前回会った《シロ》であるか確証が持てなかった。
シロに比べるとその蛇は大きい……いや、明らかに太っていた。
蛇が食事をしたあと、消化が終えるまでお腹がポコット膨らんだようなではなく。
はっきり言ってデブっているのである。
極めつけは掛ける耳も無いのにどんな原理かは知らないが、黒淵のメガネをかけ額にバンダナを巻き、背中にリュックサックを掛け、魔砲少女のイラストが描かれたキャラTを身につけていた。
いわゆる、ひと昔のアキバ系ファッションであった。
ちなみに俺が若い頃着ていたのは日本橋風ファッションである。
一緒にはするなよ。
「デュフフフフ、トーヤどのお待たせしたでござる」
やはり、こいつシロか、風貌が変わりすぎて、デカイ白蛇という共通点がなければ正直分からなかった。
「その、格好と喋り方は何だ」
取り敢えず、最大の疑問を晴らそうと問いただした。
「実はですね。あれからトーヤ殿のパソコンでゲームやら200ちゃんやらやっているウチに、色々ハマってしまいまして、特にあのなきゲー良かったですね。もう完全に信者ですよ。信者。パソコンに入っていた冬のなきげーは素晴らしかったけど、私的には春もダントツで良かったですよ。いや、あの展開は」
「待て待て!!」
あまりのマシンガントークに俺はドっぴきである。
話を要約すると、シロは俺から借りたパソコンとガネメモをプレイしてみてゲームに興味が出て来て、インストールされていた他のゲームをプレイしているウチにハマってしまったと……
そう言えば、いくつかインストールしていたが、冬のBGMはCDデータの再生になるから、音無しでプレイしたのか…
よくやるなーと妙な感心をする。
「ところで200ちゃんって、もうなかったような」
「私、一応神の端くれですので、時間超越くらいは簡単なのでネットを特定時間軸に合わせることくらい楽勝ですよ」
言葉遣いは元に戻させたが、サラリととんでもないことを言う。
特殊な力があるところは流石神さまだなと感心する。
シロ株急上昇である。
「いやー、90年代後半のアキバで色々と楽しんで、そのあと籠ってゲームしていて時間がかかり申し訳ないです」
シロ株は急反落した。
「ま、まあいい。で、俺の願いは叶えられると言うことでいいのだな」
「まあ、これを見てもらえれば理解されると思いますが」
そう言って、シロは何かしらの力を使ったのだろう。シロと俺の間に幻影のような人影が現れた。
「この方は、ガネメモシナリオライターの
おお、なるほど産みの親本人に聞けば確実という訳か。
まともな方法?で少し安心する。 俺はチーレムやロリコン紳士の末路を知り、少し心配していたが杞憂のようだった。
「葛霧さん。ガネメモの黒の少女の名前と話の結末を教えてください」
俺は魚の骨が喉に引っ掛かったような長年の疑問を問いた。
どんな答えだろうと期待が膨らんだが
「知らん。何も考えてない。つか、いきなり仕様変更で話変えさせやがって、最初と話が違うじゃねえか。ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな…… しにたい」
いや、あんたもう死んでいるから
そのあと少し落ち着いた葛霧さんにくわしい話を聞いたところ、最初は5人ヒロインで構想されたとのことだ。
だが、このゲームのキャラクター属性が6つあったことで(いわゆるファンタジーお約束の火・水・風・地・光・闇である)
それに対した、スポンサー兼製作代表のこの一言
「それならヒロイン6人がいいんじゃねぇ?」
この一言が阿鼻叫喚の始まりだった。
シナリオは既に5人のヒロインで製作が進んでおり、最終章のストーリーも完成していて、マスターアップが近い状態で1人ねじ込めと言うのは無理があった。
このゲームはヒロイン達の能力、好感パロメータ、複雑なフラグやキャライベント、フラグ、修得スキル、敵キャラクターの思考ルーチンなどなど、ありとあらゆるものがヒロイン達と直結していた為、一人増やすと言うことは膨大な工程を一から整備しなおすということであった。
ただ、スポンサーからの要望であったため、何とかマスターアップの延期を条件にし、しぶしぶ追加作業を行った。
だがある事件をきっかけにその状況が一変した。
スポンサー件製作代表の夜逃げである。
どうやら多額の借金で夜逃げしたとのことだった。
幸いにも、債権回収業が製作会社へ来ることはなかったが、資金の提供がなくなり給料どころか製作会社の光熱費にすら苦慮する状態になり、結局ゲーム制作どころではなくなり、少しでも資金を得る為にマスターアップを強行したとのことだ。
なお、マスターアップの資金は何故か既に業者に支払われていた。
製品化は幾ばくか数が出来たものの、販路がまったく決まっていなかった為、路上のゲリラ販売にシフトし、そのことで警察に厳重注意を受け結局ゲームは日の目を見ることは無くなった。
そんな状況であったため黒の少女は設定どころか、その削除作業すら行われずガネメモに残ったとのことだ。
その話を聞き俺は愕然とする。
「ストーリーどころか、名前すらないということか……」
俺はあまりの結末に膝と手を着く。
「ああ、仮の名前ならあるぞ。花子(仮)だけど」
そんな日曜夕方6時半の不動産屋の娘みたいな名前はちょっと……
一応ファンタジーだぞ。
と言いつつ、ファンタジー作品に
「藤也さん」
シロはとてもやさしい声色で言った。
「あきらめたら、そこでガネメモは終了ですよ」
俺は泣き顔で
「シロ先生…… ガネメモがしたいです……」
「うわー 名作レイプキタコレ」
葛霧さんの一言でぶち壊しである。
「では、藤也さんの同意が得られたので始めるとしますか」
「え?」
シロの言葉のあと自分の足場が急に失われ、俺は垂直落下した。
「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「では、たっ…。もとい葛霧さんありがとうございました。 ではでは」
そして、シロは藤也が居たであろう失われた足場へ、自身も身を踊らせる。
「ま、せいぜいがんばりな」
やれやれ、と言うような感じで葛霧はその姿を名のごとく霧のように薄れさせていった。
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