最期の星空
「眠れない……」
隣で寝ているアネラとエレナを起こさないようにして、そっと起き上がる。あれ? 雷姫とソフィアがいない……。
外に出ると、地面に雷姫とソフィアが座っていた。二人寄り添って星空を眺めている。その背中はとても切なげだった。
「……あたしさ、本当は怖い」
啜り泣きながら、絞り出したようなソフィアの声。雷姫に縋るようにして、手を伸ばしていた。
「あたし……君の前くらい『僕』と言っていいかい?」
「勿論。自分らしくいて」
「ありがとう。僕だって怖いよ。でも、僕は来世に希望を持っている」
満天の蒼い星空を見つめる二人。怖いのだろうけど、何故か幸せそうだった。それは、二人は絶対に許されなかった恋愛をしてきた。だから、来世では絶対に幸せになれると確信しているのだろう。
「まあ、どうして?」
「僕たちは拒絶されてきたじゃん? お互いを好きになったせいで。僕なんか家出してきたからね。だから、来世ではお互いを認めてくれる世界であると祈っているんだ」
「……そうね。希望を持たないと何も始まらないものね。ところで雷姫、今日、あれでしょ?」
あれ? あれって何だろう。
「ああ。鋏貸して」
「はい」
鋏を手に取った雷姫は、自分の三つ編みを解いた。思ったよりふわふわとした、ボリュームのある髪だったので驚いた。
星明りによって、雷姫がシルエットのようになってとても綺麗だ。
鋏はその髪を切る。大量の髪が地面に舞っていくのが見えた。その様子はとても美しく、まるで儚い何かを見ているかのようだった。
「ど、どうかな」
「似合っているわ。ねえ、この美しい星空が見れるのも最期だと思うと何処か切なく、悲しく見えるから不思議よね」
「アウロスにもエステラの星が届いているんだね」
「ええ。昼間真っ暗なアウロスだけど、夜はこの星のおかげでとても明るいの。夜の方が明るいって、不思議よね」
二人で見つめ合って、笑っている。
その時、星が一瞬キラッと輝いた。あの星は、「アレル」っていう名前。深い愛をずっと見守り続ける、恋愛の星。あの星が輝いたときに一緒に居た恋人は、末代まで結ばれる。
雷姫、ソフィア。二人はいつまでも、何処までも、一緒だから。星々の従者のあたしが、保証するよ……。
「ぐすっ……」
あたしは廃屋の中に戻る。
涙が止まらない、星空が綺麗な夜だった——。
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