理葬境〔リソウキョウ〕

忍原富臣

始まりの国

~プロローグ~

 まだ国と呼ばれるものが、おおやけに出来上がっていないような古い時代。

 各々の集団が自分の領土を主張し、戦争をしていたような時代。


 そのような戦乱の中、武力によって私腹を肥やしていた王が生まれた。名を春桜と言い、彼は八人の戦友と共に広大な土地を手にした。


 春桜シュンオウは民に安全をもたらしたが、安定を与えることはなかった。金品の納税が出来ない村の者達は、育てた穀物を春桜へと献上し、残った僅かな食糧で日々の生活を過ごしていた。飢えに苦しむ者たちは生き抜くために、炊き出しをする寺へと駆け込む……。


 春桜が己の権力を思いのままに振りかざした結果、村への納税強化は進んでいった。

 王の振る舞いに崇拝する者も居れば、逆もまた然り……。


 納税に耐え切れず、不満を述べた村人は打ち首にされ、「王に逆らえば死ぬ」という恐怖が、より一層民を苦しめるのだった。


 春桜の住む王城では豊かな生活が続き、城下もまたその恩恵を受けている。だが、周囲の村々は、どんどん疲弊し衰退していった。



 これは、戦の時代から少し先に進んだあとの物語――――――

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