第4話 自己紹介
「おかえりなさい。」
!!!
うわ!そりゃ、びっくりするよ。ずっと見えてなかった幽霊が目の前にくっきりした姿で居るんだから。
「どうしました?すごく驚いていますけど…ぷっ(笑)」
でたでた…。この幽霊、俺が驚くと分かってて遊んでいやがる。とりあえず、幽霊の横を通り過ぎて、俺は部屋に入って座った。
しかし、笑いたいのはこちらの方だね。全く幽霊には見えないのだから。
だって、皆さん俺の前に立たずんでいる幽霊さんの姿、教えましょうか?とりあえず一言で言えば全身青いタイツでドラえもんみたいな感じ。それだけだと女子力が低下するのか、可愛いらしい犬みたいな耳付きでやんの。
顔は今時の女子が加工アプリで詐欺した様な、目がやたら大きくて、顎ラインがシャープな感じを実現化された顔なのよ。
ま、ぶっちゃけ?可愛いと言えば可愛いけど、やっぱり不自然な感じはするね。でも、未来の人間てこんな感じになるんだろうなってのが納得できる顔。
ま、それよりも聞いてよ。一番ツボなのは、幽霊アピールだか何だか知らないけど、古典的な幽霊の頭に付ける三角巾ていうの?
あれ、付けてる。しかも、ちょっとオシャレに三角巾を頭に固定する紐の代わりに、メイドさんみたいな、ふりふりの布が付いたカチューシャで三角巾を固定してるんだよ。もう、ツッコミどころ満載過ぎてお腹いっぱいだわ。
そんな笑かす姿でも、幽霊は遠慮なく人の部屋に入ってきて、テーブルの向かいに座ってきた。
「で、お前名前は?俺は六本木な。六本木サトル。」
「私の名前ですか?在多(あるた)いるです。いるって呼んで下さい。私はサトルと呼ばせていただきますね。」
「お前、幽霊の癖に距離感縮めようとしてくるんじゃねーよ!何が在多いるだよ!めっちゃ存在感を強調しまくってる名前だな!幽霊のくせに!」
そう言い放つと、幽霊…いや、いるは、少し寂しげな顔をした。
……。
「悪い。言い過ぎたわ。いる、ごめんな。」
俺は静まり返った雰囲気に耐えられず謝罪をした。
……。
……、グ〜キュルキュル…。
お腹の空いた時の音が聞こえた。
「違うんです。人に認証されると、幽霊もお腹が空くのです。」
「なんだよ!それ!でも、食べなかったらどうなるんだ?」
「そりゃ、目の前の人を呪い殺して魂を食べるしかありませんね。」
「いや、お前、笑顔で言うけど、めちゃくちゃ怖い事言ってるぞ?」
「しかたないですよ。いるも幽霊でいる事にだいぶ慣れちゃいましたから。てへっ。」
そのわざとらしい、てへっ、ていう動作に少しキュンとしてしまった俺を、頼む、誰か殴ってくれ…。
こちらも色々聞きたい事だらけだったので、ピザをデリバリーした。
美味しそうに貪り食べる、いるを見て、
「どうだ?こいつはピザって言うんだけど、うまいだろ?」
と尋ねると、いるはキョトンとした顔で、
「サトルさん。未来にもピザは普通にありますよ。いったい、いるがどんな途方も無い未来から来たと思っているんですか?」
いやいや、そのドラえもんみたいな全身タイツの様な姿は少なくとも2世紀先に思えてしまうのだが。
そこで、俺は一番気になっていた質問をする事にした。
「なあ、いる。お前はどこの未来から来たんだ?そもそも幽霊がタイムスリップなんて、できるのか?」
いるは、俺の目をしっかりと見つめて答えた。
「西暦2036年です。」
その答えを聞いて、大分近い未来なんだなと思った。そして、もう一度尋ねた。
「で、2036年から、今2021年にどうやって来たんだよ?」
いるは、食べかけのピザのワンピースを食べ終えて、コーラを一口飲んだ後にこう答えてくれた。
一瞬、静まり…。口を開く。
「サトルさん。ジョン・タイターって知っていますか?」
ジョン・タイター!俺は知っていた。
西暦2000年11月3日、アメリカの大手ネット掲示板に、2036年からやってきたと自称する男性が書き込みを行った事で、この日本でも話題になったタイムトラベラーだ。
それと、いるに何の関係が??
「はい。いるは、ジョン・タイターに取り憑いていた幽霊だったのですが、彼が未来に戻る時にうっかり離れてしまい、20年間、この時代で途方に暮れていたのです。」
まじか…?
この先、在多(あるた)いるの成仏の為に、未来への鍵を見つける為に、右往左往する事になる事になるとは、この時、俺はまだ思ってもみなかった。
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