幽霊アルタイル
ケツカイシ
第1話 そいつは突然現れた
どうにも寝付けない。最近そんな日々が続いている。寝ようとすると、体の上に重さを感じ、呼吸が苦しくなり目覚めてしまう。
俺は冷や汗をかきながら、台所に行き水を飲んで渇きを潤す。
「ストレスかな。一回医者に通ってみた方がいいかもしれん。」
そして再び眠りにつく。しばらくすると、また重さがのしかかる。どうにか堪えながら無理に寝ようとしているうちに朝になり、いつも寝不足の状態で出勤だ。
それなので、昼休みはほぼ仮眠に費やしてしまう。お陰様で顔色も悪く同僚も心配している。
「まさか、霊の類なのかもしれない。」
初めて俺は霊現象を疑ってみた。
休日に神社に行き、お参りをして、御守り、御札を購入し、早速部屋の入り口のロフトに御札を立てかけ、枕元に御守り、玄関に盛り塩。基本的な除霊だが効果があるようにと願い、夜を過ごす。
「盛り塩って…。古典的ー!やってる人まだいるんだ?御札?初めて見た!というか、ただの木の板じゃないですか。変なの。あ、枕元にあるの!御守り?すごい!初めて生で見ます!結構芸術的ですね。」
???
なんだ?独り言?なんか聞こえる。女の声だな。しかもテンション高い。もしかして幽霊の声?盛り塩も御守りも御札も逆効果になってるのか??
と、不思議に思っていたら、ずしりと体の上に重さを感じる。
「やっぱりそうだ。幽霊だ。声が聞こえるなんて、逆に悪い展開になってやがる!」
思い切って声をあげようとしたが、声が出ない。しかも耳元で女がボソボソ俺に何かを話しかけている。
重みが感じなくなったところで、いつも通り、喉を潤す。そして、また寝に入るが、いつもと同じパターン。いや、今回は話しかけてくる声が聞こえるから、いつも以上に寝付けない。
朝になり、俺は会社を休み片っ端から知り合いに電話をかけて、信用できる霊媒師を探した。そして、一人の旧友が実際に自分も霊に取り憑かれて除霊してもらった霊媒師がいる事を運良く聞き出せた。
連絡先を教えてもらい、電話を掛ける。事情を説明すると。俺自身ではなく、俺の部屋に霊が住みついていると言っていた。すぐにでも来て欲しいと頼むと、霊媒師はスケジュールを調べて5日後に来てもらえる事になった。
それまでは、知人の家かホテルに泊まっていた方が良い。かなり強い霊かもしれないので、手遅れにならないうちにな。とアドバイスを受けて、俺は5日分の着替えと髭剃りや歯ブラシ等をバッグに詰め込んで、逃げるように部屋を出た。
借りたホテルは会社に近いビジネスホテルだ。これと霊媒師への謝礼金等を考えると、かなりの出費ではあるが、命には変えられない。
ホテルの中は快適で久しぶりにゆっくり寝れた。会社も近いので、時間にも余裕があり、せっかくなら4日間、幽霊の事は忘れて楽しもうと思った。
会社から帰るとコンビニで買ってきた惣菜をつまみに酒を飲み、テレビを見る。
「久しぶりだな。こんなに快適な生活は。デリヘルでも呼んじゃおうか?いやいや、これ以上出費は怖い。せっかく会社も近い事だし、夜遅くまで映画でも見よう。」
……。
俺はこの時、完全に安心しきっていた。その後、逃れられない幽霊との生活を俺は、まだ知らない。もう、この有意義な生活は戻らない事も…。
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