第14話 不穏
「よかったんですか?ハンターネームもペリットのままで」
「いいのよ。名前が何個もあるなんて大変でしょ?それに、ペリットって名前ならハンターネームの目的も達してるもの」
カーミアさんはそう言うと、ギルド内の飲食スペース───アンさんがいるところへと向かっていった。
「お待たせ」
「シーザー……と、」
「ペリットです。初めまして」
「私はアン。よろしくね」
軽く挨拶を交わして同席すると、さっそくアンさんが矢継ぎ早に口を開いた。
「それで、カナドラにいたってどういうことなの?その子は?ここにいるってことは、ハンター活動を再開するの?」
「……少しは落ち着きなさい」
カーミアさんの一言で落ち着きを取り戻したアンさんは、一口ビールを飲んで仕切り直した。
「カナドラって、あのカナドラよね?」
「もちろん」
「……魔族と何かあったの?」
アンさんのその質問に、カーミアさんは顔色も変えずに平然と答えた。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわね」
「……どういうこと?」
「私もわからないのよ。つまり、それを探してるってこと」
「……」
アンさんは納得するようなしないような、なんとも言えない顔をした。
「まあいいわ。それで、それがわかったからハンターに戻ってきたってこと?」
「いいえ、何もわからないままね。ここに来たのは、ペリットちゃんのためよ」
突然二人の視線を受けて、私は少し委縮してしまった。
「……この子は?」
「この前拾ったのよ。ライラっていう、私の相方がね」
「拾ったって……カナドラってそんな呑気なところなの?」
「かなり殺伐としてるわよ?ライラがこんな子供を拾ってくるなんて、私が一番驚いてるもの」
アンさんは訝しげにじっと私を見てから、一つ息を吐いた。
「……そう。とにかく、シーザーの顔が見れてよかったわ。あんなことがあって、ギルドにも顔を出さなくなったって聞いて、もう会えないかと思ってたから」
「そうね。私もそう思ってた」
「しばらくここにいるの?」
「いいえ。これからアーザムの方に行って、それから帝都に戻る予定よ」
「アーザム?」
「カナドラの方の仕事でね」
「それなら、また帝都で落ち合いましょう。シーザーには、見せておかなきゃいけないものがあるの」
「……わかったわ」
アンさんはその返事を聞くと、真剣な顔で頷いた。
そして残っていたビールをぐいっと飲み干すと、そのまま私たちに会釈をして去ってしまった。
「……ふぅ」
カーミアさんはそれを見送りながらため息をつくと、ウェイトレスを呼びつけて自分もビールを頼むのだった。
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