第18話 ジェシー再び。
翌日、二日酔いで昼くらいまで寝ていた。いやぁ〜飲み過ぎた。
ヒュースの宿に行くともう出たと言う…結構タフだなアイツ…。
俺はそのまま馬車に乗ってローザニアを出た。
そして3日後、俺達はレッドロックスに到着した。ギルトに向かう前にリカルド商会に行く事にする。早目に手紙を届けた方が良いだろう。
リカルド商会に到着し、ラッキーは俺の頭の上に、ガッツに馬車の留守番を任せて店に入る。
「いらっしゃいませ、サルナス様」
「王都のアレックス会頭から手紙を預かってきたのでネレイムさんに取り次ぎ願いたいのだが」
「会頭から?!それではこちらへどうぞ」
俺は前に来た時と同じ部屋に通された。
しばらくすると店の人とネレイムさんがやって来た。
「サルナス様、お久しぶりです。仕事の方は上手く行ったと聞いております…ありがとう御座いました。して、会頭から手紙とか?」
「こちらが手紙です。ジェシーの件かと思うのですが」
「ジ、ジェシーをご存知で??…それでは拝見させて頂きます…」
ネレイムさんは手紙を見てからため息をついた。
「ふむ、なるほど…ジェシーの言っていた冒険者はサルナス様でしたか…サルナス様には感謝しか御座いません。おい、ジェシーを呼んで来なさい」
店の人がジェシーを呼びに行く間ネレイムさんと話をした。
「ジェシーはかなり危ない橋を渡って来た様ですね…全く、困った子だ…」
「オークの件は運が悪かったとしか…そんなに発生する事では無いので」
「それにしてもです…護衛はキチンとしなければなりませんからね。執事一人とかあり得ませんから」
するとパタパタ音がして元気良く扉を開けたのはジェシーである。
「サルナス!戻ったのね!」
「ジェシー、その前にここに座りなさい」
ジェシーはネレイムさんの横にちょこんと座った。
「ジェシー、お爺様から手紙が来てます。こんなに心配させて…どういうつもりですか?しかもサルナス様に助けて頂かなかったら如何なっていた事か…反省なさい」
ジェシーはチラリとネレイムさんと俺を見たが返事をしない。
「ジェシー、訳があるならキチンとネレイムさんに話した方が良いぞ。ジェシーは商人なんだろ?しっかり説明出来ないと立派な商人にはなれないぞ」
するとジェシーはやれやれと言う感じで話し出した。
「そもそもお爺様は私を可愛がり過ぎなのですわ。私はもっと商人として色々な所に行き、見識を積まなければ、私の代でリカルド商会は潰れてしまいますわ」
ネレイムさんは絶句してる。
俺は感心していた。あの時の堂々たる態度もそうだが、ジェシーの器はデカいと思うな。
「何度も何度もお爺様にはこの件で話しをしたのに、全く取り合って貰えなかったのですわ。だから私は王都から叔父様の所にやって来たのです」
ネレイムさんは流石に元の顔に戻っては居るが、内心はかなり驚いて居るのだろうな。
「私のやり方を取り入れた事で本店の売り上げも伸びてますし、更にその上を目指す為には、見識を深める事は必要不可欠なのです」
「…ジェシーの考えは良く分かった。だが、お爺様に黙って出た事や警備も充分に付けなかったのは、考えが足りないと言わざる負えない」
「それは…反省してますわ…でも…」
「ジェシー、もっと綿密な計画を立ててからでも良かったのでは?そうは思わぬか?」
ジェシーも流石に黙り込む。
「とにかく、お爺様には自分でお詫びの手紙を書きなさい。此処で研鑽を積むのは私が許可しよう」
「叔父様!ホント??」
「ああ、私が許そう。ココはダンジョンの街だ。お前が覚える事も多いだろうからな」
ジェシーはネレイムさんに抱き付いて喜んでいる。こういう所はまだまだ子供だな。
ネレイムさんもジェシーには甘そうだけどなぁ…。
「サルナス様、少々お待ち頂けますか?」
「叔父様、サルナスへのお礼は私が。ヘラルド!持って来て頂戴!」
やって来たのはあの時の執事だな…ヘラルドさんっていうのか。
ヘラルドさんは小さな箱を持って来た。それを俺の前に静かに置いた。
「私からのお礼よ!受け取って頂戴!」
俺はその箱を開けてみる。
中には指輪が入っている…俺は直ぐに鑑定をする。
魔素の指輪:魔素石で周囲の魔力を集め、装着者に魔力を還元し続ける。5秒につきMP1を還元。
コレは中々面白いアイテムだな…回復量は大した事無いが常に魔力を回復し続ける訳か。ダンジョン向きのアイテムだな。
「魔素の指輪か…この魔力の回復はダンジョンと相性が良さそうだ。ホントに良いのか?かなり値が張りそうだが?」
「えっ…サルナスって鑑定持ちなの??」
「ああ、レベル3だ。聞いてなかったのか?」
「依頼の事はジェシーには話してませんので…まさか、サルナス様と知り合いだったとは思わず…」
なるほどね。ジェシーは俺の事は話していなかった様だな。
「あの腕で鑑定持ち…やはり…ブツブツ…」
ジェシーが何かブツブツ言ってるな…何か悪巧みしてるような気がする…。
「ジェシー??」
「あっ、もちろん。あの時のお礼として色々と考えて買ったの。ダンジョン向きと言われてしまったけど…」
「そうか…では有難く頂戴するよ。マジックポーションの使用量が減りそうだ」
「良かった!サルナス、何か欲しい物が有れば私に相談して頂戴。必ず見つけてみせるわ」
なるほど…俺でひと儲け企んでるという訳か。まあ、コチラとすれば顧客でもあるからな…。
「ああ、そうするよ。俺に仕事を依頼するならギルトで指名してくれ。必ず依頼は受けよう」
「ありがとう!お願いするわね!」
ジェシーは大喜びしている。ネレイムさんはそんなジェシーを優しい目で見ていた。
「サルナス様、色々とありがとう御座いました。これからも宜しくお願い致します」
「コチラこそ宜しくお願い致します」
俺はネレイムさんとジェシーに冒険者ギルトに行くと言って店を出た。
俺達は冒険者ギルトに向かった。
冒険者ギルトに入ると受付のサリーさんが俺を呼ぶ。
「サルナスさん!ギルマスがお待ちですよ!」
「ギルマスが?何か依頼ですかね?」
「何言ってるんですか!例のオークジェネラルの件ですよ!コッチでもちょっとした騒ぎになってるんですから!」
サリーさんがそう言うと周りの冒険者達の視線が俺に集まって来た。まさか、もうコッチにまで話が来てたとは…。俺はサリーさんに連れられてギルマスの部屋に行く。
「サルナスさんをお連れしました」
「おお、サルナス。中々の活躍だった様だな!盗賊退治にオークジェネラル退治か!ガハハハ!」
「全く…盗賊はギルマスの差し金でしょう?いつから気づいてたんですか?」
「何だ、察しがいいな。ギルトから出てから直ぐだ。お前が気づいて無い様だったがな。一応監視は付けてたんだぜ」
監視まで…この人…食えない人だな…。
「しかし、オークリーダーの群れがまさかオークジェネラルの発生と繋がってたとはな…」
「妙な違和感と言うか…嫌な感じは有りました。調査隊に偶然出会えたのはラッキーでしたね」
「ラッキーねぇ…レイダースのギルドで調査隊の事を聞いてたろ?そこまでやっててラッキーは無いだろう?どう見ても確信犯だな」
「まさか…ずっと監視を着けてたんですか??」
「ああ、リカルド商会に行った事も知っている。手紙を受け取って金は貰ってないそうだな?リカルド商会の会頭も感心してたぞ」
全く地獄耳もここまで来ると恐ろしい…ってかアレックスさんと繋がってたのか。やはり金で請け負わなくて良かったよ…。
するとサリーさんがもう一人の職員と何か持って来た。
「お前の持ち帰ったアイテムの換金だ」
ギルマスが皮袋の中身を見てから俺の前に置く。
「コレがダンジョンアイテムの換金分な。例の蜘蛛の分も入ってるからな」
俺は中身を確認すると大金貨が42枚入っていた…そんなに??
「ああ、ソレ多少色付けといたからな」
「それじゃあ遠慮無く…」
「うむ。それと一週間後に鑑定付きの依頼が来るからそれも頼む」
「一週間後ですね?分かりました」
俺はギルマスの部屋を出た…ギルマスめ…誰に監視させてたのか??
受付に行くとサリーさんは欠伸をしながら眠そうにしていた。
「サリーさん、コレ王都のお土産」
「え〜私にですか??」
「ダンジョンから帰って来てから色々世話になったんでね。お礼だよ」
「ありがとう御座います!あっ!このクッキーって王都で評判のヤツじゃないですかあ〜!!」
どうやら気に入ってくれたみたいだな。
俺は解体倉庫の担当さんに蜘蛛の肉を貰い、お礼を兼ねてお土産を渡たすとかなり喜ばれた。
その後、しばらく話をしてから冒険者ギルトを出た。
さて、一週間後に仕事か…明日にでもダンジョンに潜るかな…。その前にテイマーギルドと『アマルフィー』に行かないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます