第8話 サルナス地上に帰還する。

俺はオーガの部屋から魔法陣に乗り地上に出た。魔法陣から地上に出ると、ちょっとした騒ぎになった。何せハイトロルメイジのガッツは2m半は有る魔獣だからね。頭の上にへばり付く様に乗ってるラッキーも見ようによっては不気味だ。


「使役してるから大丈夫ですよ」


「テイマーか??ギルド証を見せろ!!」


俺がギルド証を見せると衛兵らしき人物は警戒を緩めない。


「テイ厶の記録が無いぞ!!」


「ダンジョンで使役したからこれから登録に行く」


「ダンジョンで使役など出来るか!!嘘を言うな!!」


「出来たもんは仕方無いだろ?使役の印が有るんだからいい加減に通してくれ」


「使役の印??そんなもの知らんぞ!!」


おいおい…使役した魔獣には使役印が付いてるのでそこで分かるのだが…コイツそんな事も知らんのか?


「じゃあ知ってる奴を出せよ。お前じゃ話にならん。邪魔するなら推し通るが?如何する?」


「き、貴様!!…」


「おい!!お前サルナスか?!!」


声を掛けてきた男がいた。ああ、ダンテスさんか…久し振りだなあ。彼はC級冒険者でギルドでも有名な顔役だ。初心者の世話を買って出てくれる人でギルドでも信頼されている。


「ダンテスさん!お久しぶりです!」


「お前生きてたのか!!死んだって聞いてたが??」


「いやあ、トカゲの尻尾切りに有って死にそうになりましたけど…何とか生きて帰りました」


「オイ貴様ら!!いい加減に…ウッ!」


「いい加減にするのはお前だ。新入りか?お前。衛兵長のロディックさんは知り合いだから報告するぞ?使役印も知らないド素人が居るってな」


ダンテスさんは物凄い威圧を掛けて衛兵を睨みつける。周りの冒険者達も衛兵を睨みつけていた。


「おい!如何かしたのか?」


もう一人の衛兵らしき人が現れてダンテスと話をすると俺に詫びを入れて来た。


「いや、本当に済まない。この馬鹿は後でみっちり教育して置くから」


「いや、分かる人が居れば問題無いですよ。気にしないで下さい」


ありゃあ後でこっ酷く叱られるやつだな…可愛そうに…。


「おい、サルナス。トカゲの尻尾切りの話…本当なのか??」


「ええ、オーガの前に蹴り出されて麻痺まで掛けられました」


「じゃあオーガがボス部屋に出たのは間違い無いんだな?」


「はい、ボス部屋の主を食ってましたから」


ダンテスさんは少し考えた後でこう切り出した。


「とにかく俺と冒険者ギルドに行こう。ギルマスに全部話してやってくれ」


「分かりました。使役魔獣の登録もありますから丁度良いです」


俺達は歩きながら冒険者ギルドに向かう。道すがら目立つガッツを見て驚く人が多かった。まあ、デカいから仕方無いな…。


「しかし、こんなトロルは初めて見たな…ハイトロルか?」


「ハイトロルメイジです。唯一種らしいですよ」


「唯一種??マジか…お前とんでも無いの使役したな!」


「珍しいならラッキーもリキッドメタルスライムですから」


「おいおい…それって幻の魔獣じゃねーか…良く使役出来たな?」


「メタルスライムで使役したんですけど、進化の実を与えたら進化してリキッドメタルスライムに…」


「…もう、話が凄すぎてついて行けねぇわ…それにお前、レベル随分と上がったろ?さっきの威圧でケロッとしてたもんな」


「は、はい…100を超えました…」


ダンテスに連れられて冒険者ギルドに戻ると受付のサリーさんがビックリした様な目で俺を見ていた。


「サリー、ギルマス呼んで来てくれ。サルナスが生きて帰って来たってな」


「た、た、只今…」


と途中でコケそうになりながらギルマスを呼びに行った…大丈夫だろうか…。

少しするとギルマスらしき人が飛んで来た。


「お前がサルナスか?」


「はい、サルナスです」


「間違いねーよ。オレが保証するぜ」


「とりあえず二人共…いやそのデカいのも一緒に来てくれ」


ギルマスは俺とガッツとダンテスさんをギルマスの執務室まで案内してくれた。俺とダンテスさんはソファーに、ガッツは後ろの床で胡座をかいて座っている。


「俺がこのギルドのギルマスやってるゴールドアイってもんだ。まずは帰還ご苦労だったな。詳細を話してくれ」


俺はオーガがボス部屋に居た事、サハリにオーガの前に蹴り出されて、ニアに麻痺を掛けられた事。中層に飛ばされてラッキーに出会った事、魔獣武装(ビーストアームス)のスキルを得た事、途中でガッツに出会った事等を話した。


「話は分かった…その魔獣武装(ビーストアームス)ってのはココで出来るのか?」


「やって見ます。メタモルフォーゼ!!」


するとラッキーとガッツが武装状態となり俺に装着される。ギルマスとダンテスさんは驚いていた。


「こんなスキルは聞いた事もない…間違い無くユニークスキルだな」


「こりゃあ凄えな…このスキルはとんでも無く化けるぞ」


「もう大丈夫ですかね?」


二人の許可を取りリムーブする。ガッツは先程と同じ場所、ラッキーは俺の頭の上に移動した。

そして、ゴールドアイギルマスが話し出した。


「実はサハリからの報告書では君の死とオーガが出た事が問題視されたんだ。実際に調査に行った時には、君の持ち物も無くオーガも居なかった。その為にその話自体が疑われたのさ。しかし、決め手を欠いたので仕方無くグレーな決着とした」


なるほど…確かにオーガが居たのはイレギュラーな事…そうなれば証拠が無いのは問題視される訳だ。


「だか元から評判の良くないサハリ達は、他のギルドメンバーから疑いの目で見られた。サルナスを殺して分け前を頂こうとしたんじゃ無いかってな。奴等はそれで居辛くなってこの街から立ち去ったのさ。どこに行ったかは皆目見当も着かない。まあ、今回の件が明るみに出たからには、此方から本部に報告が上がり手配されるから、冒険者としては活動出来なくなるだろう」


そうか、奴等は逃げたのか…思う所はあるが正直あまり気にしてはいない。恐らく今の俺ならあの全員を相手にしても瞬殺出来る程の力は有る。だからそんなくだらない事に執着する気も無い。


「ではこの件はお任せします。すいませんけど…この二体の使役登録とドロップ品の買い取りをお願いしたいのですが…」


「ああ、もう構わんよ。下で全部やらせよう」


「ありがとう御座います。ダンテスさん、色々お世話になりました」


「おう、気にすんな!」


ダンテスさんはギルマスと話があるとかで部屋に残り、俺はサリーさんに連れて行かれて魔獣の使役登録をした。ドロップ品が多いので倉庫に案内されてドロップ品を取り出すと、サリーさんと倉庫の担当者はびっくりした様子であった。


「こりゃあ…3日は掛かるぞ…」


「そうですよね…如何しょうかな…お金無いからなあ」


「それじゃあ、特別措置でこのダークハウンドの牙を依頼として処理しましょう。そうすれば報酬も入るし、Fクラスにも上がれますから」


「ホントですか!?いやあ、助かるなぁ〜」


「じゃあ残りは3日後で良いか?」


「それじゃあお願いします」


「任しとけ!!」


俺はサリーさんに連れられて、まずは依頼書を剥がし、ダークハウンドの牙と一緒に渡した。しばらく待つとサリーさんから俺に銀貨50枚とFランクのギルド証を貰った。あの牙で50枚も銀貨が貰えたのか…それならもっと狩れば良かったな…。


その後俺達はテイマーギルドにやって来た。正直、あまり来ても意味は無いのだが…登録だけでもしておけばさっきの馬鹿衛兵じゃ無いが、テイマーギルド証を見せると余計な手間も省ける。


俺達が入るとギルドの中に居た連中の目の色が変わった。世にも珍しい魔獣を二体も連れているのだからね…。


「ようこそテイマーギルドへ」


「テイマーギルドに登録したいのだけど…」


すると受付の後ろから飛んで来た人が居る。かなり個性的な服装のその人は、俺の頭の上に居るラッキーと後ろのガッツをまじまじと見てこう言った。


「とんでも無いレアな魔獣を連れて来たわね。アタシはローランド、皆からはローラって呼ばれてるわ。アタシが登録するから此方にいらっしゃい」


すると周りからは「おい…ローラが登録だと…」とか「マジか…ローラがレアって…」とかざわざわしだした。だが俺はどう見てもスカート履いたおっさんが女言葉なのが気になって仕方無かったが…。


奥の部屋に入るとおっさ…いや、ローラはガッツを水晶をかざしながら見て驚いていた。


「この子…唯一種じゃないのよ!凄いわ!ハイトロルでも珍しいのにハイトロルメイジなんて…素晴らしいわ!!」


偉く感激した様子でガッツが話せると分かると色々と聞き出していた。しかし、その時のローラの目やガッツに対する振る舞いを見てこの人の評価を上げた。この人の魔獣好きはテイマーならば親しみの置けるものであるからだ。


「リキッドメタルスライム!アタシは見た事なかったのヨ…ローラ感激っ!この子をテイムするなんて…まさに伝説級ヨ!」


ラッキーも褒められて嬉しいのかぴょんぴょん跳ねていた。


「じゃあギルド証を作って来るわ。ちょっと待っててね!」


ローラはスキップしながら部屋から出て行った。

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