第29話千年前(ゆめ)と現世(げんじつ)
※前世・イグニーア視点
ーーーー
「…ーーえっ。
イグニーア様、今なんと申されましたか?」
ぼくはくるくるふわふわな腰まで長い深緑色の髪の毛の淡い水色や青いフリルをあしらった人魚のようなドレスの小柄な少女を真っ直ぐ見つめる。
少女の長い
「ルルリナ・リディエール。
ぼくは先程告げた言葉と同じ言葉を繰り返す。
「
少女の小さな両手が自身の口元を覆った時、首元の小粒のダイヤが散りばめられた翡翠のネックレスがチャラと金属同士があたる音が部屋に響く。
ぼくは静かに瞳を閉じてから頭を横に振る。
「貴女には何も落ち度などありません」
「でしたらどうして?」
「全てはぼくの不甲斐なさが招いた結果です」
「不甲斐…なさ?
"聖女"様と共に"魔王"を
ぼくは
どちらも微動だにしないまま時間だけが過ぎていく。
「
微かに震える声でそう問いかけるルルリナの言葉にぼくは雷でうたれたような衝撃を受けた。
「どなたから、そう聞かされましたか?」
「
質問に質問で返したぼくに困惑しながらもルルリナはそう答える。
「…そう、ですか」
ぼくは"
「イグニーア様はムツキ様を想っていらっしゃるのですね」
「……ええ、大切な…」
「
「…ーー愛して…いました」
…ーー
その言葉を聞いたルルリナの薄紫の瞳から大粒の涙が溢れだして、両手で顔を覆い隠す。
「…ーイグニーア様からの、婚約解消の申し入れを…受け入れ…ま…す」
ルルリナは掠れる声でそう告げると瞳に涙を溜めたままぼくを見つめて、
「最後に…お願いが…ございます。
イグニーア様が
ぼくはルルリナの願いを受け入れて4本の白薔薇を贈る。
触れたルルリナの手は氷のように冷たくて微かに震えていた。
「…ーーッ!」
僕の意識が
くしゃと髪を掻きむしると、大量の汗で湿気を帯びており気持ち悪い。
ベットから窓へ移動してカーテンを開ける。朝日が差し込み僕は瞳を眩しさで眼を細める。
「…ールルリナ」
――――――
「フィル君、おはよう!
あれ、入浴してきた?」
「……おはよう。
うん。スッキリしたくて
ジューッ、ジューッとフライパンの上にフレンチトーストが焼かれている。
「朝入るお風呂って気持ちいいよね。
そうだ。
僕とイグニは甘いものが苦手だ。
ハルはそれを
「うん、それでお願い。
それから無理してディアーナの単語に合わせなくても、ハルの世界の単語使っても大丈夫だよ」
「え?」
ハルが瞳を真ん丸にして困惑する声をあげる。
「シャワーやトッピング他にも
ハルが僕を見つめたまま固まる。
フライパンからはジューッ、ジューッとフレンチトーストが焼かれ続けてる音が聞こえて、
「焦げてる!」
「わわっ」
僕は咄嗟に叫んで、ハルは慌ててフレンチトーストを真っ白な大皿にのせる。
今日の朝食はほんの少し焦げたフレンチトーストと大皿の左上にレタスとミニトマト、
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