第20話“暗闇”

 その日の夜。俺はなかなか寝付けなかった。

 ごろん ごろんと何度目の寝返りだろうか、俺は胸元に違和感を感じた。


 起き上がり寝巻きの下に隠れてる【魔石】のペンダントを取り出した。氷の様に冷たかった【魔石】が



 昔、お父様から【魔石】の説明を受けていた時に力を宿した【魔石】が使用可能になるとなると聞いた記憶がある。


 俺は咄嗟に起き上がり部屋を出た。


(ディオールと叔父様はどこだ!?)




  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




 最初に叔父様とディオールの部屋、リビング、チッキン、中庭、俺は邸中探して回ったが、2人の姿は何処にも見当たらなかった。


(いない)


 俺はとぼとぼと廊下を歩いていた。


(俺の考えすぎか)


 そう思い始めた時だった。廊下の先にお父様の書斎のドアの前、微かに開かれたドアの明かりの先を見つめたままポツンと突っ立ている。


(ガルダ)

「どう」


『どうした?』そう言いかけた時、ガルダの顔が真っ白でガタガタと身体が震えている事に気付いた。俺はガルダが見つめてる先が気になり、微かに開かれたドアの先を見ると


「…っ‼︎」


 本棚の前に立っている叔父様とソファにもたれ掛かる様に倒れてるディオールが居た。俺はやっと見付けたのに、声をかけることが出来なかった。


 それだけ書斎なかが異様だった。


 叔父様の瞳は虚ろで黒い霞の様なモノが叔父さまの周りを囲み、背後の肩の上辺りに煙りの様な“”が叔父様に纏まり付いていた。その中にナニかが居るのは分かったが、濃すぎて姿は確認出来なかった。


(なんだアレは⁉︎)


 俺は自分の周りに赤と黄色の透明なカーテンの様なモノとガルダには白と黄色の花々が見える事に気付いた。


(今まで見えなかったのになんで…、まさか【】の、か!)


 俺は答えを求めてディオールを見たが、ディオールは表情かおはうな垂れていて見れない、肩から腰の辺りまで何かに斬られた傷が有り、床一面に血が溢れていた。血の量からもディオールが死んでいる事が俺にも分かった。


「…叔父さま、…ディオール、どーしたの?」

「ガルダ‼︎」


 俺はガルダの口を封じたが遅かった。

 書斎なかに居る叔父様がディオールから俺達が居る廊下を見た。


『あら、まぁ。こんな夜中にどうしたの?』

「お前は誰だ?」


 俺は震えるガルダを抱き上げて叔父様の身体なかに居るナニかに聞いた。


『あらあら、貴方はディオールコイツと違ってナニも感じてなかったんじゃないかしら?』


 ナニかは叔父様の身体を使ってディオールの身体を軽く蹴った。


「やめろ!叔父様から出て行け⁉︎」

『…出て行け?…何を言ってるの?』


 ナニかは何も分からずキョトンとしていたが、やっと理解し分かったのか


『あらまぁ可哀想に。貴方達は真実なにも知らないのね』


 ナニかはニッコリ笑い右手を自分叔父様の胸に当てて口を開いた。


「えっ」


 何を言っている?


『この男はね。貴方達のお母様の事がずっとずーと慕っていたの。でも自分ではなく、兄と結ばれてしまって貴方達も産まれてしまった』


 叔父様がお母様を好きだった?


『最初はいろんな女達と付き合って、諦めようとしてたみたい。でも諦められなかった』


 やめろ。


『そんな時にに魔王の封印がゆるんでいる事に気付いたの』


 やめてくれ。


『兄がいなくなればお母様を手に入れられる。王宮へ報告へ行く馬車に事故が起こる様に細工をして、兄を殺そう』


「嘘だ‼︎」


 ナニかはくすくすと笑い。


『本当よ。まぁ、お母様まで巻き添えになってしまったのは計算外だった様だけれども。わたくしかいがあったわ』



「どういう…ことだ?」


わたくしも愛した人を他人ひとに取られましたの。そのひとを取り返す為にを利用しましたの』


「ふかん…ぜん?」


 話が見えない。


『無駄話もここまでですわ。貴方達もご両親の元へ逝きなさいね』


「…ッ‼︎」


 俺はガルダを連れて邸の外へ逃げ出した。


「に、い、さま」


 邸は森の中にあった為、俺達は街へ目指した。ガルダも必死に俺の手を離さない様に走り続けたが…。


 ザッシュ!


 ナニかがガルダの身体を引き裂いて血が飛び散った。


「ガルダ‼︎」


 俺は倒れてるガルダを支えようとして


 ザッシュシュ‼︎



 俺の額がナニかが斬りつけた。



「ガル…ダ」



 ザッ ザッ


 ナニかが近づいて来る。


 薄れゆく意識の中で俺はガルダが心配だった。


 誰でもいい。


 俺はどうなってもいいから、弟を。


 ガルダを助けてくれ。



 チャリーン



 鈴の音を聞いて俺の意識は途絶えた。

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